「もういいよ、このオープニング映像! キャピキャピした感じ、違うんだから、内容と! もっと深いでしょ」

 狩野英孝は、『「魔法少女まどか☆マギカ 始まりの物語/永遠の物語」TV Edition』の折り返しとなる第6話のオープニングを見ながらそう言った。狩野は本作の副音声コメンタリーを担当している(TVerでは狩野本人の映像付きで配信されている)。『まどマギ』シリーズはまったくの初見で、最初にオファーが来たときは「いや、魔法少女って。40のおじさんが見るアニメじゃないでしょ」と一度は断ったらしいが、「大人も楽しめる」というスタッフからの説得に応じ引き受けた。この手の副音声は初回や最終回などに限られることが多いが、全話ついているのがいい。何しろ、予想外の展開が何度となく訪れるアニメだ。部分、部分だけでは魅力が伝わらない。結果、狩野は冒頭に引いた発言のとおり、可愛らしい絵柄とは裏腹のダークで深い世界観の虜になっている。

狩野英孝 ©文藝春秋

 もちろん、第1話の時点では「マギカって誰?」などと初見ならではの素直なリアクションで笑わせてくれていたし、第2話の巴マミが悲惨な死を迎えるシーンでは「マミさん……? えっ、え、え、なにこれ。ウソでしょ……。ウソでしょ……」とパニック。そうそう、自分たちも最初見たときはそうだったと共感できて面白い。そうした再見の人はもちろん、狩野と同じように初見の人にとってはガイドのような役割を果たしているだろうし、実質的な再放送を見てもらうための試みとして大成功といえるだろう。

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 やはりその成功の要因は狩野英孝という得難い人材をキャスティングしたことだ。狩野といえば「ラーメン、つけ麺、僕イケメン」で知名度をあげたが、真の意味でのブレイクは、ドッキリだろう。いわゆる「ドッキリスター」になる条件は、人間的な面白さはもちろんだが、もうひとつ大事な要素がある。それは、目の前で起こったことや感じたことを、素直かつ的確、迅速に言葉で表現できることだ。最近のクロちゃんを思い起こすとわかりやすい。「なんなのー?」と言いつつ、自分が置かれた状況を過剰なほど言葉にして伝えている。これは簡単そうでなかなかできることではない。狩野のゲーム実況が人気なのも、そうした才能があるからに違いない。

 もちろん『まどマギ』副音声でもそれをいかんなく発揮している。また、キュゥべえに対しいち早く違和感を抱き、「契約違反だろ!説明不足」などとツッコんでいたように、まさに「野生の勘」的な鋭さもあるから、余計に面白い。この後のあのシーンやあの展開を見たとき、狩野がどんなリアクションをするのか、早く見たくてたまらない。

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『「魔法少女まどか☆マギカ 始まりの物語/永遠の物語」TV Edition』
TBS 日 17:00~
https://www.madoka-magica.com/tv/