3人だけでステージに立つというポリシーを貫く
これに先立つ11月の武道館でのコンサートは、それまでのライブハウスでのステージと同様、バックにダンサーやバンドをつけず、3人だけでステージでパフォーマンスをやり遂げた。事前にMIKIKOからはステージをより派手に見せるためにバックダンサーを入れるかどうか相談されたが、断ったという。そのため、MIKIKOは空間を埋め、3人でも大きく華やかに見える演出を苦労しながら考えてくれた。Perfumeもいつものライブと変わらない気持ちで観客と向き合えた分、素直に楽しめたと同時に、「3人だけでもできるんだな」ということに驚いたらしい。以来、どんなに大きな会場でも3人だけでステージに立つことは彼女たちのポリシーとして現在まで貫かれている。
2010年に初めて東京ドームでコンサートを行うに際しては、あの大きな空間で3人の存在を大きく見せるためにはどうしたらいいのかとMIKIKOは、クリエイター集団「ライゾマティクス」を率いる真鍋大度に相談している。
当時はまだ巨大なLEDディスプレイなどもなく、ステージで使えるほどの輝度を持ったプロジェクターも存在しなかった。そんな技術的な制約のなかで、ライゾマティクスは衣装や舞台装置に工夫を凝らし、光る衣装や風船、レーザービームで風船を割る装置などを生み出すことになる。
これをきっかけとしてライゾマティクスはPerfumeのプロジェクトに携わるようになり、ステージを中心に最先端の技術を駆使したメディアアート的な試みを展開していった。紅白歌合戦でも毎年、斬新な演出が注目されることになる。なかでも、「Cling Cling」を披露した2014年の紅白でドローンが飛んだステージは印象深い。じつはその前年にも真鍋たちはドローンによる演出を提案していたが、番組側から「何かあったときに危ないのでドローンにひもをつけてほしい」と言われ、実験でもひもをつけて飛ばしたという。だが、むしろそのほうが難易度が高く、結局この年は断念、1年越しのリベンジでようやく成功させたのだった。
もっとも、真鍋は《Perfumeの演出は、テクノロジーがすごいんじゃなくて、彼女たちがすごいからできるものばかりです。そういうテクノロジーの使い方を探すことのほうが大事なんじゃないか。そう思っています》とも語っている(『Perfume Disco-Graphy Exhibition Catalogue』コンデナスト・ジャパン、2024年)。(つづく)
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

