Sakana AI共同創業者・COOの伊藤錬氏は、多忙な中でも「朝の時間」を大切にしているという。伊藤流の朝の過ごし方についてうかがった。
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鍵は「クラブのプール」
(1)「朝の時間」をどのように使われていますか?
10年ほど前から、仕事のためにロンドンと東京の2拠点生活を送っています。本拠地はロンドンなので、ここではロンドンでの朝の過ごし方を記します。
日本とのやりとりが多いので、起床は午前3時。東京とは9時間の時差があるので、東京ではちょうど正午です。起きたらすぐにメールをチェックし、返信が必要なメールを送ります。
メールが終わったら、5時前に自宅を出て、ペルメル(Pall Mall)通りにあるクラブへ向かいます。ペルメル通りは、白い石造りの建物が整然と並ぶ優雅な通りで、その両側には英国文化を象徴するジェントルマンズクラブが立ち並んでいます。5年前、私もこの通りにあるクラブの一つに入会しました。決め手となったのは、プールです。そのクラブの地下には、長さおよそ25メートルのプールがあって、ここで、毎朝5時から1キロ泳ぎます。
この時間帯に来ているのは私を含めて10名ほど。皆さん常連で最高齢は90歳。田舎に大きな家を持ってるとか、どうやら学者だったらしいとか。仕事の話はしないので詳しい経歴はわからないのですが、現役の経営者なんかもいらっしゃいます。泳ぐのにこの時間帯を選んでいるのは、プールがすいているからです。本当はプールが開くのは6時なのですが、早起きのお歴々の会員のための特例で、その前から泳がせてもらっています。ちなみに、もっと早く午前4時に来ると、ユダヤ教の最高齢のラビがおられるという伝説も聞いたのですが、私はまだお目にかかったことがありません。
プールから上がった後は、ソファーで新聞などを読みながら、常連さんたちと「今日は瞑想がうまく行った」とか、「この新聞記事が面白かった」なんて会話に混ぜてもらっています。面白いのは、どうやらここには暗黙のルールがあって、誰がソファーのどの席に座るかが決まっていることです。常連の中にはイギリスの誇るファッションデザイナーの方もいるのですが、この方は新参の会員のようで、最年少の私とともに何かと控え目にされています。
皆のささやかな楽しみが、ここで食べる軽い朝食です。6時15分きっかりに、クラブから、無料のコーヒーとクロワッサンが供されます。雑談している時もちょっとそわそわしながら皆でこの時間を待ちます。クロワッサンが運ばれてくると、一人に一つだけなので、ゆっくり丁寧にいただきます。
私は、7時には自宅に戻って、仕事を再開します。その後、正午までズーム会議が続き、日本が寝静まった後のロンドン時間の午後からは、市内でAIの同業他社の方や投資家と会ったり、採用面接をしたり、もっぱらじかに人と会う時間にしています。早めの夕食が終わると私の1日は終了。20時には就寝してしまいます。
東京にいるときは、午前3時には起きませんが、5時に起床してメールをチェック。7時から一泳ぎしてから仕事というルーティーンは変わりません。
※本記事の全文(約2000字)は、文藝春秋2月号および、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(伊藤錬「プールサイドでも、紙とペンを用意しておく」)。
■特集「朝は黄金の時間」
超多忙な経営者10人が明かす「人生を変える朝の習慣」
岡藤正広(伊藤忠商事会長)
鳥井信宏(サントリーHD社長)
谷田千里(タニタ社長)
伊藤錬(Sakana AI共同創業者)
柴山和久(ウェルスナビCEO)
河合利樹(東京エレクトロン社長)
駒崎弘樹(つながりAI社長)
加藤崇(レトリック・エーアイCEO)
野本弘文(東急会長)

