愛知県は、カニさんをひっくり返したような形をしている。もう少し具体的にいえば、南側の海に向かってカニのハサミのように、2つの半島が突き出しているのだ。西が知多半島、東が渥美半島である。

 そして今回は、渥美半島に行こうと思う。何しろ渥美半島の玄関口・豊橋までやってきたのだから、少し足を伸ばして渥美半島へ。ちょうど按配のいいことに、豊橋鉄道渥美線というローカル私鉄が走っている。さっそく、この小さな電車に乗って、渥美半島の旅に出かけよう……。

電車に揺られて終着駅へ

 豊橋鉄道の電車は、新豊橋駅を出発してしばらく市街地の中を走ってゆく。愛知大学前駅などがあるから、このあたりは学生の利用も多いのだろう。ターミナル・豊橋までほんの10分程度なのだから、線路沿いには大学以外にも住宅地が広がっている。

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今回の路線図。おや、半島の先まで伸びる点線が……。

 それでも少しずつ車窓はのどかさを増してゆく。

 渥美半島は、全国屈指の農業地帯だ。特に電照菊をはじめとする花卉の生産、またキャベツやらブロッコリーといった野菜類もよく作られている。沖合に黒潮が流れ、温暖な天候に恵まれて……というヤツだとか。訪れたのは凍えるような冬の日。けれど、渥美半島に行けば少しは春を感じられるのだろうか。

 そんな期待をほんのりと胸に抱きながら、電車に揺られること30分とちょっと。終点の三河田原駅に着いた。渥美半島の大部分を占める、田原市の玄関口である。

現在の終着駅・三河田原 撮影=鼠入昌史

 だが、あれ、おかしいぞ。寒いじゃないか……というのはさておいて、地図を見ると渥美半島のまだ半分までしか来ていない。むしろこれから先が本番なのに……というところで線路が途切れているのだ。さてはて、どうしたものか。

 実は、かつてはここから先にも線路が延びていた。すっかり市街地になっていて、駅前の道路がそれの跡なのだろうと推察するしかないが、三河田原駅から黒川原駅まで2.8kmは、線路が続いていたのだ。