――それは、国際結婚だから?

杉浦 もちろんそれもありますが、それ以上に「カオハガンならでは」の大変さがあったかもしれません。カオハガン島は、ここ数十年でいろいろと整備が進んだ島です。それは、設備だけでなく戸籍もなんですよ。

 夫やさらにその上の世代には、「出生証明書が提出されていない」という人も少なくありませんでした。夫も、その一人です。そのため、結婚するにはまず出生証明書を作るところから始めなくてはなりませんでした。

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夫には戸籍がなく、結婚までに作る必要があった

フィリピンでは「離婚」ができない

――結婚式は挙げましたか?

杉浦 はい。カオハガンの結婚式は、誰でも参加できるんです。教会は開放的な造りで、外からも内部が見えるようになっています。私たちの結婚式当日も島中からたくさんの人が集まってくれました。それを見た私の父が、「島全体で2人の結婚を祝福してくれているんだね」と言ってくれて、嬉しかったですね。

 ちなみにフィリピンでは、法律上「離婚」はできません。もう少し詳しく言うと、「結婚自体をなかったこと」にする手続きはあります。ただそれには、気が遠くなるようなお金と時間がかかるんです。教会の結婚式では、「健やかなる時も、病める時も……」という誓いの言葉を贈り合いますよね。フィリピンでは、まさに文字通りの意味を持っているんです。

――結婚の誓いの言葉に重みがある、と。

杉浦 以前、島の人に「パートナーのどんなところが好きで一緒にいるの?」と聞いてみたんです。そしたら「一緒にいるのに理由なんている?」と返されたことがあって。

 フィリピンでは、結婚して一緒になると決めたら、その愛をどう維持していくかに重きを置くんです。結婚後は「好きな理由があるから一緒にいる」というよりも、「一生一緒にいると誓ったのだから、そこに理由は関係ない」という感覚に近いかもしれません。

新郎新婦と、親戚一同で撮った1枚。カオハガン島の結婚式は、親族ではなくとも誰でもが参加できる

――日本の結婚観とは違いがあるのですね。

杉浦 日本だと「関係の維持を諦める」、つまり離婚の選択肢がありますからね。でもここではその選択肢がないから、関係を維持することに全力を注ぐんです。私の夫も、まさにそのスタンス。

 今だからお話できるのですが、結婚後、価値観の違いで「一緒にいるのが辛い」と思ったことも何度かあったんです。でも、そのたびに夫は私と全力で向き合ってくれました。