気付いたら、服や食器がなくなっていて……

――価値観や文化の違いで、どんなことに困ったのか教えていただけますか。

杉浦 最初にびっくりしたのは「服がなくなる」ことでした。

 長男が生まれてから、夫の実家で暮らすようになったのですが、赤ちゃんの服がいつの間にかなくなるんです。探してみると、家の中には見当たらなくて。最終的に、息子と年の近い子どもがいる親戚の家に干してあるのを見つけました。

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 夫に聞いたら、「家族なんだから、服を共有するのは普通でしょ?」と、不思議そうな顔をされました。「貸し借り」という感覚すらなく、当たり前のように一緒に使っているんです。食器に関しても同じです。気づけば、うちのお皿がどんどん減っていく。最初の頃は、「それ、我が家の食器です」と言って夫の親族の家に回収しに行くこともありました。

結婚後、文化の違いから戸惑うことも少なくなかったという

――それは戸惑いますね。

杉浦 カオハガン島は、島に住んでいるみんなが家族という意識がすごく強いんですよね。その考えは、すごく素敵だなと思っています。一方で、日本で生まれ育った私からすると、「え?」と思うことも少なくなくて。

 私は普段、島に1つしかない宿泊施設で働いているんですが、ある日お客さま対応をしていて、帰る時間がいつもより遅くなったんです。すると夫から「佑子は家族と仕事どっちが大事なの」と言われたり、「たまには1人の時間が欲しいな」と部屋にこもっていたら、すぐに夫が「どうしたの、何かあった!?」と心配して探しにきたりして、1人にもなれないんです。それを「しんどいな」と感じていた時期もありました。

「すべてを理解するのは難しい」文化の違いをどう乗り越えた?

――どうやって乗り越えたのでしょうか。

杉浦 最初は、夫の考えを理解しようとしていたんです。相手を深く理解することが、結婚をうまく続ける秘訣なんじゃないかって。でも、歴史も文化も全く違う環境で育ってきたのだから、すべてを理解するのは難しいんですよね。それに気づいて、「この人はこの人」「私は私」と思えるようになってから、価値観の違いを前向きに捉えられるようになりました。

――理解することをあえてやめた、と。

杉浦 理解しようと頑張っていた頃は、「なんで分かってくれないの」とぶつかることが多かったんです。正直、私は何度か諦めかけました。でも夫は、諦めずに私と向き合い続けてくれた。その姿を見て、私も歩み寄らなければいけないな、と思い始めました。