――具体的には、どんなふうに歩み寄ったのでしょうか。
杉浦 私、一度仕事モードに入ると、ずっと仕事のことばかり考えてしまうんですよね。夫とぶつかっていたときは「仕事を頑張りたい私の気持ちを、どうして分かってくれないの」と思っていました。でも、自分や家族の時間を犠牲にしてまで仕事にのめり込む私を、夫は心配してくれていた。そんな働き方は持続可能じゃないって。
だから、まずは自分の中でルールを決めることにしました。夕方5時までには仕事を終わらせて家に帰る。お客さまと夕食をご一緒するなど、どうしても夜まで仕事があるときは、仕事の合間に一度は家に顔を出す。今も試行錯誤中ですけど、少しずつ、お互いが納得できるバランスを探しています。
――その歩み寄りの積み重ねが、今の関係を作っているのですね。
杉浦 今思うと、これは国際結婚に限った話じゃないですよね。同じ国で生まれ育っても、考え方は人それぞれ異なります。相手のことを完全に理解するのは、どんな場合でも難しい。
それでも一緒にいると決めたのだったら、理解できなくてもいいから、お互いに譲り合えるバランスを探していく。結婚ってそういうものなんだな、と今は思っています。
――そう思えるようになってから、暮らしの中で変わったことはありましたか。
杉浦 服やお皿がなくなることについても、見え方が変わってきました。うちの服やお皿がどんどん近所に行っているのに、「着るものがない」「食べるお皿がない」と困ったことはなかったんですよね。それは、我が家にも近所の家から服やお皿が来ていたから。
じゃあなぜモヤモヤしていたんだろうと振り返ってみたら、「これは自分のもの」という所有欲だったんだな、と。日本で育った私にとっては自然な感覚だと思いますし、今でもその感覚が完全になくなったわけではありません。ただ、島の人たちにとっては、ものは「誰かのもの」ではなく、みんなで使うもの。どちらが正しいということではなくて、そういう考え方もあるんだ、と受け止められるようになりました。
島民は「万が一」を考えず、貯金もしない
――島民はみんな家族という思いがあるから、モノも共有するんだ、と。
杉浦 それはお金に対しても同じで、島の人たちは基本的に貯金をしないんです。以前、夫に「万が一に備えて、少しずつ貯金をしよう」と話したことがあるんですよ。でも彼は「『万が一のこと』があるかもしれないと考えるから、そういうことが起こるんだよ」と言っていて。うちの夫に限らず、カオハガンの人たちはみんな同じような考えなんです。
――とはいえ、日本人的な感覚からすると実際に「万が一」が起きたら……と思ってしまいます。
杉浦 実は、まさにそれが起きたんです。

