思わぬ出費で「やっぱり貯金しとかなきゃいけなかったんだ」そんな時、島民は……

杉浦 次男を妊娠したとき、ちょうどコロナ禍真っ只中でした。産婦人科が一時閉鎖されていた影響で、検診を受けられたのも臨月に入ってからで。そこで初めて、コロナ対策として医療スタッフの防護服代を患者側が負担しなければならないこと、さらに帝王切開での出産になることが分かり、予想していたよりもかなり費用がかかることが判明したんです。

「どうしよう」「やっぱり貯金しとかなきゃいけなかったんだ」とパニックになってしまって……。泣きながら島の医療施設であるヘルスセンターに相談しに行ったら偶然そこに来ていた島民たちが私の話を聞いて、「この島には700人もいるんだから、少しずつ借りればなんとかなるよ」と言うんです。ただでさえ、コロナ禍でみんな大変な時期なのに。

 この時に、島の人達が貯金をしない理由が理解できた気がしました。信頼関係や助け合いの関係性がすでにできあがっているから、何かあっても誰かが助けてくれると信じられる。お金を貯めることではなく、人とのつながりそのものが、この島のセーフティネットになってるんだな、と。

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誰かが困ったときには、島民の全員で支え合う

――島の助け合いの文化は、子育てにも表れているのでしょうか。

杉浦 子どもが生まれたとき、義母から「赤ちゃんを最優先にしなさい」と言われました。赤ちゃんが泣いたらすぐに、抱っこしてあげなさい、「仕事や家事が忙しい」というのは赤ちゃんを待たせる理由にならない、と。

――なかなか厳しいですね。

杉浦 一見するとそう感じますよね。でも、この島では、島の大人たちみんなで赤ちゃんの成長を見守るんです。例えば、私が疲れた顔をして歩いていると「私が赤ちゃんのお世話をしているから、その間に寝ておいで」と言ってくれる人がたくさんいる。私が洗濯物を干しているときに赤ちゃんが泣き始めたら、近所の人が「抱っこするよ!」と駆けつけてくれる。島全体で、子どもを大切にする環境が根付いているのを感じます。

 フィリピンにはキリスト教の洗礼式で、実父母以外の数人の大人が「この子を生涯導きます」と誓いを立てる文化もあるんです。子どもたちはその人たちのことも「パパ」「ママ」と呼んで慕っている。親だけでなく、島中の大人が我が子のように見守りながら育てていくんです。

次の記事に続く 「京大を出たのにもったいない」と言われることもあるが…水道もガスもない海外の島に、高学歴女性(37)が移住した深いワケ

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