「煮汁の泡が落し蓋をググっと持ち上げて、煮汁が魚の表面を洗っていく。そのときに全体に味が回っていくんだ」
魚の外側が固まったら、落し蓋を取って中火にし、おたまで煮汁を魚にかけて照りを出す。そして、火を止めてからも1分ほどかけ続けるのがポイントだという。
「火を止めてからもしばらく煮汁をかけるのは、そもそも味は冷めるときに身に染み込んでいくからだよ」
料理研究家や飲食店経営者を満足させる魚
鹿児島県阿久根市から空輸されてきたイラは一尾2200円。それぞれ1キロほどの2尾を購入して向かったのは都内の酒飲み夫妻宅。奥さんのほうは料理研究家でもある。今回は友人2人も招いたという。料理ライターの女性と、焼酎バーを経営している男性らしい。イラのいかつい見た目などはまったく気にせず、味わって酒と合わせることに集中しそうなメンバーだ。緊張する……。
まずはイラの湯引き。慌てて失敗してしまったのは、サクの状態で湯をかけてしまったこと。これは湯引きではなく「湯霜」と呼ばれる料理技術で、刺身に切り分けてから湯をかけることに比べると熱が入る部分が少なくなる。結果として、少し固めに仕上がり、よく噛んで賞味することになった。
上田さんが指摘するように、イラはガツンと来るうまみはない。でも、噛んでいるとほのかな甘みが立ち上がって来る。それがポン酢の酸味と合わさってバランスの良い味になるのだ。
「ベラの仲間と聞いたので水っぽいのかなと思いましたが、まったく違いますね。弾力があって、凝縮したうまみを感じます!」
料理ライターの女性が嬉しい感想を述べてくれた。確かに、水っぽさなどは皆無で、むしろ弾力のある歯ごたえを楽しめる魚である。
昆布締めでイラのうまみが爆上がり
そして、昆布締め。簡単かつ劇的に旨くなるので、上田さんに教わったレシピを記しておく。
1.昆布を酒でふいて、塩をパラパラと振る
2.そぎ切りにした刺身を昆布の上に置き、また塩を振る
3.キッチンペーパーを1枚かぶせる
4.ラップで包み、上に皿などで重しをして、冷蔵庫で30分間ほど寝かせる