以上だ。昆布は刺身の片面だけが触れていればOK。短時間なので昆布の匂いがつきすぎず、昆布と魚の旨みの融合を楽しめる。白身全般に使える手法なので、水っぽい魚を引き締めながら味を足したいときなどにぜひ実践してほしい。
さて、実食。まさにヒラメの昆布締めを凌駕すると感じた。イラの中に隠れていた旨みが昆布で存分に引き出されているのだ。これはすごいぞ。
「濃い! 昆布で引き締まっていて、うまみが増していますね~」
と絶賛するのは奥さん。湯引きに比べると明らかに味が濃いことに驚いたようだ。焼酎バー経営の男性は「匂いが強すぎない焼酎のロックと合う」とさっそく研究を始めていた。
いかつい見た目も愛おしくなる最高の贅沢
煮つけは、上田流「泡煮」のおかげで煮汁を沸騰させ始めてから10分も経たずに完成。砂糖の甘さがあまり好きではない筆者は薄味にしてしまいがちだが、友人夫婦にはそれが良かったようだ。
「魚の味がくっきりとわかるのが嬉しい」(奥さん)
「魚のうまみと煮汁が染み込んだゴボウが旨いね」(旦那さん)
ただし、焼酎に合わせるのであれば、もう少し煮汁を甘くするべきだったかもしれない。
全員にヒットしたのは塩焼きだった。脂が少なめの魚なのに、しっとりふっくらした食感で、穏やかなうまみがにじみ出てくる。
特に人気だったのはカマ。身よりも脂があり、上田流二段塩によって奥にまでしっかりと塩味が入っている。箸でちまちまとほじると、骨の間からも肉が出てくる。つまり、酒の肴にして長々と食べ続けるのに最適なのだ。
「いい塩加減ですね~。柑橘を絞ってもいいかも……。これは焼酎よりも日本酒ですね」
焼酎バーの店主がつぶやき、全員がうなずいた。
イラはいかつい見た目で評価が低いと冒頭に書いたが、実際に損をしているのは魚ではなく人間だ。今回購入した1キロ超のイラは2200円。同サイズの天然ヒラメを鮮魚店で買えば、安く見積もっても5000円はする。つまり、半値以下でヒラメを凌駕する味を手に入れられる計算だ。一般的な高級魚の概念にとらわれない選択が、最高の贅沢への近道となる。
イラ。こんなにお得でうまいと、無骨な見た目も愛おしく思えてくる。見かけたら「即買い」の魚だと覚えておきたい。
フリーライター
1976年埼玉県所沢市生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。著書に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せの見つけ方~』(講談社+α新書)などがある。2012年より愛知県蒲郡市に在住。趣味は魚さばきとご近所付き合い。
