何も、忠犬というのはハチ公に限った話ではない。誰だって、我が愛犬こそがいちばんの忠犬に決まっている。ただし、ハチ公のように駅前に銅像が建つほどとなると、やはりそうそういるものではない。ハチ公に並び立つ忠犬、いったいどこに……。

 と、探していて見つけたのが、忠犬タローである。

 タローがいるのはJR常磐線石岡駅前だ。なんでも、玉造(たまつくり)町に暮らす女の子の飼い犬だったという。が、あるとき幼稚園に通う列車に間違えて一緒に乗り込み、石岡駅ではぐれてしまったのだとか。

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現在の石岡駅 撮影=鼠入昌史

 で、近くの小学校に飼われつつ、いつまでも飼い主を駅前で待ち続けた……。なんだか、ハチ公よりもほっこりして、ちょっと泣けるエピソード。

 そういうわけで、石岡駅前にはタローの像が設置されているのだ。

地図から消えた“ナゾの鉄道”

 ところが、である。タローが玉造から石岡駅までやってきたという、その列車。これが石岡駅のどこにも見当たらないのだ。

 

 石岡は、古代常陸国国府も置かれた常陸の中心地。常陸國總社宮の例大祭は、関東三大祭りのひとつに数えられるビッグイベントだ。が、肝心要の石岡駅、そこに“玉造からの列車”はやってこない。

 だいたい、玉造というのはどこなのか。大阪環状線の玉造駅なら知っているけれど、茨城県にも同じ名の町があるのか。はてさて……。

 と、調べてみたところ、2007年まで石岡駅には鹿島鉄道というローカル私鉄が乗り入れていたようだ。

今回の路線図。常陸の中心地でありながら、現在は鉄道空白地帯となっている。

 鹿島鉄道が結んでいたのは、石岡~鉾田(ほこた)間。鉾田は鹿嶋市や行方市を含む鹿行地域の中心都市だ。そして、このふたつの町の真ん中に玉造という町もあった。

 いったいどんなローカル線だったのか。さっそく玉造を目指して跡をたどってみることにしよう。