健康診断のシーズンを迎え、結果に一喜一憂している人も多いはず。年間3万人を診察する総合診療医の伊藤大介さんは、「健康診断こそが深刻な病気の『芽』を摘むことができる唯一の方法です」と強調する。

 そんな伊藤さんの著書『総合診療医が徹底解読 健康診断でここまでわかる』には、健康診断の受け方を180度変えてしまうような目からウロコの活用術が満載。

 今回は健康診断を受けるうえで、ぜひ知っておいてほしい「3大原則」の三つ目を紹介する。前回の記事では健康診断の検査は、「レベル」(これまでの生活で体内にどのくらいのダメージが蓄積しているか)を測る項目と、「スピード」(将来的にどのくらいの速さで病気を発症するか)を測る項目の二つに分けることができると説明していた。

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 コレステロールなど「スピード」にあたる項目は悪い数値が出ても簡単に改善できるが、一方で腎機能の指標になる「クレアチニン」や動脈硬化の指標になる「眼底検査」など「レベル」にあたる項目は残念ながら元通り回復することが難しいという。

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【原則3】改善できるのは「スピード」だけ

 ちなみに、健康診断は「レベル」と「スピード」のどちらを重視しているのでしょうか。大まかに検査を「レベル」を調べる項目と「スピード」を調べる項目に分けてみると、図表(4)のようになります。

図表(4) 健康診断の検査を分類

 

 そもそも、昔の健康診断は身長や体重、視力検査、聴力検査、胸部レントゲン、血圧測定、尿検査のみで、「レベル」を表す項目ばかりでした。つまり「これまでのダメージの蓄積」だけしか把握できなかったのです。

 ところが、後に肝機能(AST・ALT)、脂質(LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪)、糖代謝(血糖値・HbA1c)など、「将来どのくらいの早さで悪化するか」を調べる検査が次々と追加されていった。つまり現在の健康診断は「スピード」の項目を重視していると言えるのです。

「現代の医学にはありません」としか答えようがない

 では、なぜ、健康診断では「スピード」の項目を重視するようになったのか。それは、今後の人生で改善することができるのは基本的に「スピード」の数値だけだからです。繰り返しになりますが、「レベル」の検査項目で慢性的に悪い数値が出ているような場合は、残念ながら、それを改善させることはできません。

 例えば、クレアチニンの数値が常に高く、腎臓の機能が悪い人から「腎機能の数値を改善するにはどうすればいいですか?」と聞かれても、医師は「その手段は現代の医学にはありません」としか答えようがない。腎臓を移植するしか手がないのです。

 心臓も同じです。悪くなると、収縮力が落ち、硬い心筋線維に置き換わってしまいます。そうなると、いくら心臓の機能を取り戻そうとしても、自分自身の力ではどうすることもできない。現在はiPS細胞を用いた心筋シートなど、再生医療の分野が開拓されつつありますが、そのような最先端の医学や心臓移植などの技術に頼るほかないのです。

 だからこそ、健康診断では、変動しやすい「スピード」の検査項目に注意して、生活改善に努め、病気を発症させないようにすることが大切なのです。