相方・みなみかわの名が売れた理由
「あらびき団」は、TBSの深夜枠で2007年~2011年に放送されていたネタ番組(その後も不定期で単発番組として放送)。その名の通り「あらびき」の荒削りなネタを、有名無名問わず芸人やパフォーマーが披露し、MCの東野幸治さん、藤井隆さんがツッコミを入れていくというスタイルが人気だった。
のちに「R-1ぐらんぷり」で優勝する「ハリウッドザコシショウ」や「キングオブコント」で優勝する「どぶろっく」もまだ無名のころに出演していて、番組内では人気者だった。
吉田 あのアイヒマンスタンダードのキャラが生まれた経緯がありまして。大晦日やったかな? 松竹の若手がどさっと、ごちゃっと出る劇場のイベントを、僕がズル休みしたんですよ。ほんと僕、そういうとこダメなんですけど、なんかこう……行きたくなくて。
――ダメやなあ!
吉田 そのイベント、各々のネタの時間もあったんですけど、僕が行かなかったから、みなみかわがピンでその時間を埋めることになって。近所の雑貨屋でふざけたバカでかいサングラスを買って、「韓国のバックダンサー漫談」っていうネタをライブ前にパパッて考えてやったら、それがウケたらしいんですよね。
しかもそのキャラで「R-1ぐらんぷり」に出たら準決勝まで行って。それをあらびき団のスタッフさんが観てて、「よかったら番組出ませんか?」って声かけてくれたらしいんですよ。
――すごいな! 番組内でもプチブレイクしてたもんね。それがきっかけで東京に来たの?
吉田 いや、その1年くらい前から、コンビで東京に行きたいって事務所に伝えてたんです。大阪はやっぱり「吉本帝国」ですし、上も詰まってましたから。そのころちょうど「TKO」さんとか「オジンオズボーン」さんとか、事務所の先輩が東京に行き始めてたので、「僕らも行きたいです」って言ったら「はあ? 何の実績もないくせに。何か賞でも獲ってから言え!」って一刀両断されて。その後に相方が「あらびき団」にハマったから、改めて上京したいって言いに行ったら、もう面倒くさかったんでしょうね。「まだ言うてんの? もうええ、行け行け。何の保証もないから自己責任やぞ!」って。
――あっはっは! そんな厳しい言い方だった?
吉田 本当なんですよ。ニュアンスはそんな感じでした。それで上京してきたんですけど、正直、「ピーマンズスタンダード」は全く知られてなくても「アイヒマンスタンダード」は、他の芸人さんも知ってくれてたから、「あ、コンビだったんだ。よろしくね」みたいな。そこは助かりましたね。なのに当時は僕の嫉妬が勝って、めちゃくちゃにしてしまったんですけど。
――どういうこと?
吉田 みなみかわのピンのキャラ「アイヒマンスタンダード」がプチブレイクしたから、営業のオファーなんかも来たんです。それを彼は優しいので、コンビの仕事にして僕も行かせてくれて。そうすると僕にもギャラが入るじゃないですか。でも、現場はやっぱり「アイヒマン」を待ってるから、彼のピンネタはウケても僕との漫才はウケないんですよね。「え? もうひとり出てきたけど誰? この時間なに?」みたいな空気を如実に出されて。それでも一応、なんとかウケようと試行錯誤したんですけど、どうにもこうにもコンビのネタというか、僕がウケなくて。そうなるともう、相方がピンネタやってる時も、本来なら横にいる僕がツッコんだりガヤを入れたりして盛り上げなあかんところを、最終的にただ舞台の端に立って、黙って冷ややかな目をしてました。
――嘘でしょ?