医師、薬剤師、国家公務員、ピアニストなどという職業に加え、大学院卒という人も2割ほどいる。TOEIC900、英検1級、華道師範といった記載につづいて、勤勉な性格、頑張り屋、職場の人気者、親孝行などと、「親から見た子ども」のアピールが熱い。
男性側も同様で大学院卒が3割以上。会社役員、公認会計士、年収900万円、スポーツマン、女性を守れる強さを持つ、若々しい外見、そんなアピールもあった。
学歴などの高さに加え、リストの男女は総じて年齢も高かった。女性の中心層は30代後半で、40代の人も3割近い。男性は30代が少なく40代前半が中心層、50代の人も何人かいた。
人間性が大事だとは言うけれど…
私がはじめての代理婚活に出向いた2022年当時、長男は36歳でIT関連企業に勤めるごくふつうのサラリーマン。仮に釣り合いを考えたとき、年齢や学歴が高い女性は相応の男性を選ぶかもしれない。当人の言うとおり「望み薄」の可能性は高いのだが、根が楽天的な私は、つれない長男をけしかけてみた。
「ともかくさぁ、割と年齢が近くて、旅行とか共通の話題がありそうで、性格的にも合う感じの人だったらいいんじゃない?」
「いやぁ、どうだろう。だいたいこれって、親の目で判断するわけじゃん。女性側の親にしたら、自分の娘より高学歴の人とか、ふつうの年収じゃなく金持ちのほうがいいとか、そっちが大事になるんじゃないの?」
「そういう人なら、こっちからお断りよ」
私はついムキになって言い返した。
「私なんかずっと出版業界で働いて、それこそ学歴や年収が高い人をいっぱい見てきたけど、名実ともにすごいなって思う人ほど謙虚だよ。能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ。逆にお金や地位を鼻にかけるような人は、見かけ倒しで人望なんてありゃしない。ふつうのサラリーマンで何が悪いのよ。真面目に働いて、優しくて、家庭を大事にできる人のほうが断然価値があると思うけどね。まして結婚する相手なら、お互いを尊重し合えるとか、一緒にいて安心できるとか、人間性のほうが大事に決まってる」
はいはい、長男は肩をすくめて苦笑した。「口」では母親にかなわないとわかっているせいか、それ以上の会話を打ち切ってさりげなく席を立つ。「皿、洗っとくね」、そう言ってキッチンシンクに置かれたままの食器を手際よく片付けはじめた。
押しつけがましい自分を反省しつつ、一方で私は、こういうところが長男の長所だと感じていた。典型的な草食系、間違っても人を押しのけてガツガツいくようなタイプではないが、だからこそいつも穏やかで、場の空気をうまく収めようとする。