懸念があるならやめればいいのだが、同じ円卓を囲む親たちの様子を窺うと、誰もが複数枚の身上書を持参し、準備万端という雰囲気だった。複数枚というのは、先のリストから事前に複数の候補者を選び、それぞれの親との身上書交換に進みたいからだ。仮に5人の候補者をリストアップしていたら、5枚の身上書を用意しておく必要がある。むろん交換を断られる場合もあるが、それとは別に、自分が候補に挙げていなかった「お相手」の親から交換を希望されることもあり得る。そのため主催業者からは、「身上書の枚数は、余裕をもってコピーの上、当日ご持参ください」とあらかじめ通知されていた。

次第に「後れを取ってなるものか」という気持ちに

 私はといえば息子をけしかけた末、女性リストから5人を候補に挙げていた。正確にはそれぞれのリスト番号に○や△を記入し、第一候補か二番手か、そんなふうに優先順位をつけた。我ながらえげつない話だが、なにしろこちらからの交渉時間は30分と限られている。初対面の挨拶を交わし、長男の身上書を提示し、我が子はどうでしょうかなどと打診しながら相手の情報まで聞き取ったりすれば、すぐに時間は経ってしまう。

 ほかの親も同じことを考えているのか、同じ円卓の右隣の男性はリストに蛍光ペンでマーキング、付箋までつけていた。左隣の母親とおぼしき女性は細かな文字が書き込まれたメモ帳と会場内の親たちを交互に見て、いかにも段取りを確認している様子だ。

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 私は次第に会場の雰囲気にのまれていった。代理婚活への躊躇や身上書を交換する懸念よりも、後れを取ってなるものか、そんな気合いがむくむくと湧いてくる。自然体でいこうと心がけていたはずが、あれよあれよという間に前言撤回だ。

「交流の時間となりました。まずはご子息様の親御様、ご息女様の親御様のお席に伺い、お話をされてください。ご息女様の親御様はそのままご着席の上でお待ちください。男性側のアプローチタイムは、今から午後1時40分までです」

 主催業者の声かけを受けて息子を持つ親たちは一斉に身上書を携え、会場のそこかしこに散らばった。

次の記事に続く 「失礼ですが、年収はおいくらですか?」息子(36)の代理で婚活したら…「お相手」候補の親から突き付けられた“まさかの条件”