学歴とか年収とか目に見えるものではなく、内面を重視してくれる「お相手」が見つかればうまくいくのではないか、そんな期待が楽天家の私に火をつけた。
もっともそれは、「親から見た」という話にほかならない。本当の意味でどういう女性が長男に望ましいのか、もっと言えばこのリストの女性にとって長男が「お相手」となり得るのか、私の思いとは別の現実があるのかもしれなかった。
身上書とプライバシー
「皆様、本日はようこそお越しくださいました」
会場内に設置された舞台上のマイクを前に、主催の代表者がオープニングの挨拶をはじめた。
「私どもが主催するこの交流会では、これまで延べ2万人以上の親御様にご参加いただいております。どなた様もご子息様、ご息女様のご良縁を願い、お子様のお幸せのために一生懸命活動しておられます」
参加する親たちは神妙な面持ちで、ときに拍手を交えながら代表者の話に耳を傾ける。私も右へ倣えと小さく拍手をしたが、セーターにスリムパンツというカジュアルな服装も相まって、どうにも居心地が悪かった。
ご子息? ご息女? 名家でもあるまいし、聞き慣れない敬称が耳に入るとモヤモヤする。むろん業者にすれば当然の敬意と思って使うのだろうが、庶民の我が家は女性の家柄など求めていない。平凡で堅実、優しい人柄なら十分なのだが、婚活というのはそう単純ではないのだろうか。
代表者の挨拶後に、いよいよ親同士の交流が開始される。前半の30分は男性側の親が女性側の親のもとに移動し、「お相手」として我が子はどうでしょうかと打診する。後半の30分、今度は女性側の親が男性側の親のもとへ行くという仕組みだ。
その際、親は相手に対し、我が子の「身上書」を提示する。先の参加申込書と同様、こちらも事前に親が記入した上で当日持参するのだが、身上書にはリスト以上の詳細な個人情報があった。
まずは氏名、これはむろん本名だ。居住地、つまり子どもが住んでいる住所もある。身長や体重、血液型といった身体的特徴に関わる項目に加え、会社名や所属先、出身校も必要だ。年収欄こそないが、インターネットで「○○株式会社 平均年収」などと検索すればおおよその収入はわかる時代。そういう意味でもプライバシーは筒抜けのようなものだろう。
さらに家族全員の氏名、年齢、学歴、職業、住所欄まであった。「父・○○○○ ○歳 ○○大学卒 ○○株式会社 住所・東京都国立市○町○番地」とか、「姉・○○○○ ○○大学卒 ○○デザイン会社 住所・横浜市中区○町○番地」などと、こちらも一家全員の個人情報を「実名」で記入する。
