ミラノ五輪では、フリーでの完璧な演技で、5位から大逆転で金メダルを獲得したりくりゅう。ただ、2019年の結成時、木原龍一はバイト生活中で、三浦璃来も壁にぶち当たっていた。それから7年。2人を成長させた、カナダでの暮らしとは――。

初出:「週刊文春」2026年3月5日号。年齢、肩書は当時のまま。

三浦璃来と木原龍一 ©JMPA

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 カナダ・オンタリオ州の州都トロント。その中心街から車で15分ほど走ると、トップアスリートたちが通う診療所がある。そこでマッサージセラピストを務めているのは青嶋正氏。これまでに羽生結弦や紀平梨花らに施術し、日本オリンピック委員会の強化スタッフだった時期もある。

 2019年の秋、彼のもとを1人の若者が訪ねてきた。 “りくりゅう”の木原龍一(33)だった。

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「力を貸してほしいんです」

 切実なまなざしで、青嶋氏を見つめる。その隣に、ペアの三浦璃来(24)の姿はなかった。青嶋氏が言う。

「今でこそいつも一緒に来ていますが、当時の彼女は17歳。怪我とは無縁だったから、コンディショニングの必要性を感じたことがなかったのでしょう。ウチに初めて来た時も、『無理やり連れてこられた』という顔をしていました」

三浦はいつもマリオカートを

 木原が施術を受けている間も、特に興味を示すことはなかった。三浦の視線の先にはいつも、持ってきたニンテンドースイッチのマリオカートがあった。

 当時、りくりゅうの顔と名前を知っているのは熱心なフィギュアファンぐらいだった。木原も「大会に出ても取材陣が自分たちの前を素通りしていく」と自虐的に語っていたほどだ。

 それから7年目の冬。カナダでの長い“共同生活”を経て、2人は世界中が知る金メダリストになった。