「実のところ政府専用機はそれほどありがたみがありません。無料でもないし、むしろ高くつきます。有事の備えとして必ず二機で飛びます。一機は空で、燃料を含めた運航コストが2倍近くかかる。その分をわれわれ随行員たちが負担しなければならないので、民間のファーストクラスより運賃が高くなるのです。初めの頃のミャンマー行きなどは物珍しくて乗りましたけれど、途中から断りました。みな私と同じようなスタンスで、ブラジルのリオ五輪に行った(2016年)ときの民間機は、日本の財界人だらけでした。
エジプトからシリア、ヨルダンと歴訪したときは、欧米系の民間機だと危ない。どこにするか、社内で検討してエミレーツ航空にしました。中東ドバイのエミレーツはイスラムの仲間だから撃ち落とされる心配はないだろうと……。おまけに機体が新しくてサービス抜群、エミレーツのファーストクラスは完全に個室になるので、非常に快適でした。機内で清水建設の宮本(洋一会長)さんともいっしょになり、みな考えることは同じなんだなと思いましたね」
ときの政権の肝煎り政策とはいえ、民間企業にとってビジネスにならなければ、そこに乗らない判断もあるだろう。
辺野古への極秘訪問
――総事業費数兆円とされ、なかなか進まない沖縄の辺野古基地建設も大成建設が担っているが。
「菅(義偉)さんから官邸に呼び出され、私一人では対応しきれないから、土木畑の台(和彦元副社長)君を連れて官邸を訪ねました。『もっと早くやれ』と指示されました。ただ、そう簡単ではありません。そこでまずは現地視察をすることにしました。一種のアリバイ作りのようなものだといえばいいのでしょうか。頼まれたこちら側が東京でじっとしてたら、政府も不満だろうし、そこまで言われたら、何か行動を起こさなければなりません。だからとりあえず現地で地元の反対デモ隊の様子を見に行こうとなったのです。
実際、現地は相当に神経過敏になっていました。そこへ大成の山内が来るとなれば大変な騒ぎになるので内密で行きましたが、官邸に辺野古へ行くと伝えることが大事なんです。あの頃はまだ軟弱地盤問題も持ち上がっていない段階でしたけれど、本音をいえば、ここに基地をつくるのがいいのかどうか、わかりませんでした。ただし、いったん引き受けた以上、やる方法を考えざるをえません。なにしろ官邸では『金はいくらでも出すから、早くやれ』というんだからね」
※約1万1500字の全文では、不祥事が起きても機能しない社外取締役について山内隆司氏が問題提起しています。
全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年4月号に掲載されています(森功「いるだけムダな社外取締役の罪と罰」)。
