新国立競技場、リニア新幹線談合事件……安倍官邸との舞台裏
日本のスーパーゼネコンの一角を占める大成建設といえば、建設業界のみならず、広く知らない者はないだろう。そんな名門企業で、かつて天皇と呼ばれた元会長と現役社長が法廷で争っている。
端緒は、前会長で前名誉顧問の山内隆司(79)の解雇通知だった。昨年7月30日のことである。正午前、副社長の岡田正彦が監査役の林隆と連れ立ち、山内のいる名誉顧問室を訪れた。A4用紙1枚の書面を差し出した。そこには、次のような言葉が書かれている。山内は思わず目を見開いた。
〈本日17:30を目途に執務室からご退出ください〉
大成建設の社内ではこの数年、名誉顧問の山内と社長の相川善郎(68)との確執が取り沙汰されてきた。少し前まで部下だった社長からいきなり会社を去れと命じられたわけだ。当人が驚くのは無理もなく、これ以来、両者の亀裂がますます深まっていった。挙句、山内は今年4月18日に自らの解雇を不当だとして、相川を相手取り、裁判を起こしたのである。

訴訟を起こした山内は、紛れもなく大成建設の中興の祖であった。2年前まで会長として率いた大成建設は、ついこのあいだまでゼネコン業界のナンバーワン企業として我が世の春を謳歌してきたといえる。ことに安倍晋三、菅義偉と9年近く続いた「官邸一強」の政権時代は、数々の国策工事を受注し、他のスーパーゼネコンの追随を許さなかった。山内は言う。
「たしかにうちと安倍、菅政権とは非常に良好な関係を結んできました。企業の経営は、ときの政府と切っても切れない関係にあり、とりわけ建設業界は歴史的に見ても、国の方針に寄り添って動いてきた面は否めません。たとえば安倍政権下では、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となった国立競技場の建設を受注することができました。その一方、リニア中央新幹線の工事では談合事件に直面し、えらく苦労しました。やはり企業活動と政治は切り離せないのです」
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