「独裁なんて絶対ありえない」「フジの執行部は逃げる連中ばっかり」
聞き手・構成 森 功
昨年末に火のついた中居正広の性暴力事件は、瞬く間にフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の経営陣に燃え移り、最高権力者と目される日枝久(87)に向かった。
事件は、日枝の培った上納文化という企業風土が温床となって引き起こされた――。
フジテレビとFMH両方の取締役相談役を務め、フジサンケイグループ代表でもあった日枝に対し、世間からそんな批判が巻き起こる。ほどなくフジテレビとFMHは外部弁護士を中心とする第三者委員会に事件の調査を委ねた。だが中居事件の火は、弁護士による3月の調査報告や6月の株主総会、フジの検証番組を経た今なお、鎮火しない。

日枝はこの間、ずっと沈黙を守り続けてきた。さる7月6日に放送された2時間近いフジの検証番組にも出演していない。番組では三度取材を要請したが、拒否されたとも報じている。その日枝本人が事件発覚から半年以上たち、口を開いた。
「回数は正確に覚えていませんが、たしかに番組制作を担当した報道側からインタビューの申し出がありました。僕のところへ中元をもってきて『検証番組に出てほしい』と言ってきました。それで『僕がこんなものを受け取れるか』と突き返しました。申し出はありましたけれど、質問項目も何もないので、何が聞きたいのかわからない。他にもインタビューの依頼はたくさんあり、産経新聞からもありましたけれど、僕なりに考え、すべて断ってきました」
お手盛りでは意味がない
――なのに、今になってなぜ私のインタビューに応じるのか。
「僕は今年に入ってからずっと、なぜ記者会見に出てこないのか、とか、雲隠れしているとか、偽装入院をしているとか、さんざん言われてきました。
ただね、僕は逃げることが大嫌いなんです。2005年のホリエモン(堀江貴文)による買収騒動のときには、僕はフジテレビの会長として1日に二度、朝晩会見をやり、記者さんの質問に徹底的に答えてきました。記者会見は会長や社長などの執行部がやるものであり、今度の場合は相談役の僕が出ていくのもおかしいでしょう。
僕自身は第三者委員会の調査にも応じました。ジャーナリズムにかかわり、フジテレビを経営してきた1人としてお詫びし、反省しなければならない点も少なくありません。ただし、これまで事実でないことも数多く伝わっており、それは会社にとってマイナスだと感じています。やはり、どこかで事実を話そうと思ってきました。株主総会が終わった今ではないかと考えたのです」
――なぜフジテレビの検証番組ではなく、文藝春秋のインタビューに応じたのか。「週刊文春」が報じて火のついた問題について、同じ会社の発行する月刊「文藝春秋」のインタビューに抵抗はなかったのか。
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