「人質司法という問題を自らの経験から指摘したい」——検察の暴走を訴える痛哭の手記
4月27日、午後9時20分頃のことだった。
「出るんだ」
東京・小菅にある東京拘置所の独居房で寝ていると、見知らぬ看守数人にいきなり叩き起こされた。
状況が理解できず、「出るんだって言ったって、どうするの」と、非常に幼稚な言葉を吐いたのを覚えている。保釈請求が通ったのかもしれない。薄々そう感じていたが、喜びはまだ湧いてこない。いつもの様に看守は命じるだけで、必要最低限の情報すらも与えない。それが拘置所の基本姿勢だ。
私は3年前、心臓の手術をしている。不整脈、心房細動などの持病を抱えており、一日に十数錠も薬を飲まなければならない身だった。拘置所内で倒れたこともあり、車椅子に乗せられていた。この頃は、部屋の布団の上げ下げはもちろん、着替えをすることすら辛くなっていた。
私がゆっくりと着替え始めると2、3人の看守が部屋に入ってくる。隅に山積みになっていた差し入れの本と服などの私物を手際よく段ボールに詰めていく。時間にして約10分。部屋は奇麗に片づけられた。
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source : 文藝春秋 2023年11月号