ふじき 僕の書いたものが映像になる時に危惧しているのは、「笑わせるように演出したり、笑わせようと芝居をしたりすること」。そうなっちゃうと、僕が思っているものとは「間」もズレるし、台無しになるパターンが起こり得るな、と。
ドヒャーッ! っていうギャグを書いていたなら、「笑わせるように」演出するのが正解だと思うんです。そのあたりのニュアンスはちょっと微妙で、言葉にしづらいところではあるんですが。その「トーン」みたいなところが伝わっていたらいいな……と思いながら書いているんですけど、それが『ばけばけ』ではきちんと現場に伝わっていて。
――「トーン」と「間」を守るために、編集も重要だったりしますか?
ふじき 台本の第2稿、3稿の段階で尺がオーバーしているとなると、本打ち(脚本打合わせ)の場で「どこを切るか」という話になるんです。たとえば2人以上の人物が会話をしている場面の「シーン尻」で、二言、三言、わりとどうでもいい台詞があったとします。
普通ならまず「カット候補」になるところ、村橋さんは「でもこれ『ばけばけ』だから、ふじきさんの本だから」と、台本上では残してくれるんです。僕はわりと演出の気持ちを優先しちゃうので、「ここは残してください」と言えないタイプなんですが(笑)。それで、「編集で詰められるところは後で探すとして、撮るだけ撮ってみよう」と。村橋さんが演出担当でない週でも、細かくコントロールしてくださっていました。
「『どうでもいいこと』が僕の脚本では生命線」
――『ばけばけ』は「シーン尻」や、15分の最後のカットが独特でしたよね。
ふじき 僕の好きな「シーン尻」は第14週(「カゾク、ナル、イイデスカ?」/村橋直樹チーフD演出)で、出雲大社でヘブンと結婚の誓いを立てて帰ってきたトキが、松野の家族にそれを言おうとして、なかなか言い出せないというくだり。フミ(池脇千鶴)、司之介、勘右衛門(小日向文世)はヤモリに夢中で、「あ! ヤモリ」「ヤモリ?」「親子のヤモリじゃ」という3人のやりとりでシーンが終わっています。
この週は、金曜日の回に結婚披露パーティーという大事なシーンもあるのに、決定稿の段階で40分も尺がオーバーしてしまっていたんです。全体的に切ったり詰めたりしなきゃいけないところ、ヤモリは残った。村橋さんは、「必要なところだけを残していく編集方法は『ばけばけ』に限っては正解じゃない」と言って、どうでもいいところをなるべく残そうとしてくれていました。「笑い」に関して言うと、そこはとても大きかったと思います。「どうでもいいこと」が僕の脚本では生命線だったりするので。




