――台詞を書く時、「笑い」というポイントにおいてのこだわりを教えてください。

ふじき いちばん気をつけたのは、英語混じりの日本語を話すヘブンの台詞。「片言」であること、うまく喋れないことを笑いにすることは、絶対にしないと決めていました。

――個人的には、むしろヘブンが英語で話す場面のほうが面白いシーンが多かった印象があります。英語のディクテーションの授業の教材に、錦織(吉沢亮)に向けた愚痴を使うとか。視聴者から人気が高く、ふじきさんご自身もお気に入りという第8週(「クビノ、カワ、イチマイ。」/松岡一史D演出)の、「ビア(beer)」のシーンもそうでした。

ADVERTISEMENT

ふじき 「What's this?」とか「Not カマー! Beer,beer!」とか(笑)。台本をきっちりと体現してくれたトミーさんが素晴らしかったです。あのシーン、髙石さんの「カマー」「ヒエー」「ゴマー」とかの言い方は面白かったんですけど、現象自体は特に面白いというものではなくて。書きながら「こうなるだろうな」というのはわかるんです。あそこは、ヘブンが真面目に、本当に困惑している感じが面白いんですよね。「いや違うんだ! わかってくれよ」「これじゃないだろう!」みたいなところが。

大真面目に困惑するヘブンが面白かった「ビア」のシーン ©NHK

 僕は脚本を書く時、やってる本人たちはいたって真面目なんだけれど、傍から見ればちょっとズレてたり滑稽だったりする、ということを大事にしていて。「ビア」のシーンも、髙石さんとトミーさんが真面目にやってくれたのが面白かったですね。

――「ジゴク」「シブシブ」「アバヨ!」とか、銀二郎(寛一郎)にちょっと嫉妬して「フトン」と呼ぶとか、ヘブンのワードチョイスも面白かったです。こういうワードは普段から書き溜めていたりするのでしょうか。

ふじき 僕はそれをやらないんです。脚本を書きながら浮かんでくることがほとんどです。キャラクターが自然に喋り出して、「この人だったらこう言うだろう」という言葉を書かせてくれるというか。「あれを言わせよう」と狙って書いたりすると、結局嘘の言葉になっていくので。

「『こういうこともする人だよな』と思って(笑)」

――「異人だから」ではなく、ヘブンだからこその言葉であると。「やってる本人大真面目」で思い出されるのがやはり、第2週(「ムコ、モラウ、ムズカシ。」/村橋直樹チーフD演出)でトキのために司之介が散切り頭にしてきたお見合いのエピソードです。あそこでも村橋さんは、北川景子さん(タエ役)や堤真一さん(傳役)に「岡部さんを真似してください」とおっしゃったそうですが。

見合い相手から「古臭い武家の娘」と言われて断られぬよう、トキのために散切り頭にしてきた司之介(岡部たかし) ©NHK

ふじき それで皆さんすぐに掴んでいただいたことが映像を見てもわかって、ありがたかったです。でも岡ちゃんの芝居って、松野家・雨清水家を演じる皆さんの中でもひときわ大きいんですよね。司之介なりに真面目に生きてはいるんだけれど。

 これはまだ司之介が髷を結っているシーンですが、松野家の3人に席を外させて、傳とタエがトキに婿を取ることをやめて嫁入りを勧めるシーン。「あのあの話」をするのではないかと気が気でない司之介が、立ち聞きをするために部屋に近づく際、「抜き足差し足」みたいな感じで大股で歩いてるんです。だけど、僕はそんな指示を台本には書いてなくて。予告編であの大股歩きを見た時、「こういうこともする人だよな」と思って(笑)。