――「ふじき脚本作品の演者のお手本」なのに。

ふじき 結構ギリギリの線を攻めてるんだけど、岡ちゃんが台本から読みとった「ここまでなら」というラインの中でやっているのがわかるので、信頼を置いていました。「うわ、何やってんだよ」とは全然ならない。ちゃんと司之介として見ていられました。

――演劇ユニット「切実」をはじめ、長年苦楽を共にしてきた岡部たかしさんと、若い頃「笑い」について談義したというようなことはありましたか?

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「『狙ってる』『笑わせようとしてる』みたいなことはすべきじゃない」

ふじき 30代の頃、岡ちゃんがよく言っていて覚えているのが、「笑わせようとしたらあかん」という言葉。僕も昔は、演劇とコントの融合みたいな脚本を書く時、岡ちゃんに「唐突で意味のない台詞」を渡していたことが多分にあったと思うんですね。当時の僕は「とにかく笑いを取らなきゃ」みたいなことにとらわれていました。だけどある時、岡ちゃんから「この台詞だと、なんで俺がここに立っているのか、わからなくなる」と言われたんです。

 やっぱり彼は役者だから、キャラクターの造形を無視した台詞は「堂々と言えない」と。逆を言えば、キャラクターとしてそこにしっかりと立ってさえいれば、何も怖いものはない。スベるとかスベらないの話じゃなくて、その人物として真面目に生きているがゆえに「つい言っちゃった言葉」。それがたまたま笑えるものだったりするし、笑えなくたっていい。そこを目指すべきなんだと。

第1回、このドラマのトーンを決めた「丑の刻参り」のシーン ©NHK

――「その人として立っているからこその台詞が面白い」というのは、まさに『ばけばけ』が大事にしてきた「笑い」に通じますね。

ふじき だから僕も「狙ってる」「笑わせようとしてる」「笑いを待ってる」みたいなことはすべきじゃないと、ずっと胸に刻みながら脚本を書いています。僕よりも岡ちゃんのほうが演劇歴はずっと長くて、彼から教わったことはたくさんあります。

次の記事に続く 「髙石さんのままやってくれてありがとうございました」『ばけばけ』脚本家・ふじきみつ彦が驚いた髙石あかりの“本当のすごさ”《きょう完結》