――髙石さんのコメディエンヌとしての資質はいかがですか。
ふじき オーディションのために渡した台本がわりと真面目なシーンだったので、僕はその時点では「笑い」の部分に関しては見抜けなかったんですよ。でも出来上がった映像を見てからは、全幅の信頼を置くようになりました。それは髙石さんが、トキを生きているからなんだと思います。笑いが生まれそうなシーンでも、ちゃんと「普通」に演じてくれている。たぶん、ヒロインが笑わせにかかってしまったら、終わりなんですよね。
――笑いに関してヒロインはあくまでもトスを上げる立ち位置であって、シュートを決める立場ではないと。
ふじき そうですね。司之介にツッコんだりする台詞もよくあるんだけど、ちゃんと親子、家族の関係性をふまえたうえで台詞を言ってくれるので、間違いないんですよね。
――髙石さんのコメディ・センスが光っていた、お気に入りのシーンは?
ふじき 第11週(「ガンバレ、オジョウサマ。」/小島東洋D演出)で、トキがヘブンに金縛りがどいういうものかを説明するために、ウメ(野内まる)に「幽霊やって」と寸劇の相方を頼む。ウメが「幽霊の立ち位置」に移動する際、襖が開ききっておらず、ウメが通りやすいようにトキが寝転んだままバーン! と雑に開けるところ。
あそこ、笑っちゃったんですよね。「襖が開ききっていない」「雑に開ける」はもちろん台本には書いていなくて、現場で起こったことなんですが、髙石さんの瞬発力が素晴らしい。「トキならやりかねないな」という感じもあったし。
ヘブンが毎朝「オハヨウゴザイマス」と言う理由
――寸劇終わりで、トキがさりげなく、とても小さな声でウメに「ありがとう」と言うのもよかったですよね。寸劇につきあってくれたお礼を、ちゃんとするところが。
ふじき 細かいところまで見てくださって、ありがとうございます。実は今回、明治時代の元武家の家族の話ということで、「ありがとう」「ごめんなさい」は忘れないように、礼儀にはすごく気を遣ったつもりでした。「このシーン、『ありがとう』がないほうがテンポがいいかも」と思うようなところもいくつかあったんですけど、僕としては外せなかった。
ヘブンも短気なところはあるけれど、実は礼儀正しいんですよ。毎朝きちんと「オハヨウゴザイマス」を言うところとか。松江中学に勤めていた頃、錦織が毎朝迎えにきていましたが、「何度も出てくるシーンだし、毎度毎度言わなくてもいいだろう」と思ってしまいがちなところでも、ちゃんと挨拶の言葉を入れるようにしていました。
――トキ役が髙石さんに決まってから、当て書きした部分はありますか?
ふじき 髙石さんに決まる前に、最初の3週ぐらいまでをすでに書き始めていたんです。それで、トキ役が髙石さんに決まって、岡部たかし、池脇千鶴さん、小日向文世さんと、松野家を演じる俳優さんが全員決まってから、なんとなく「この家族の感じ」というのが立体的にイメージできるようになってきて。「松野家の話をもっともっと書いていきたい」と思うようになりました。言ってみれば「松野家丸ごとに当て書き」みたいな感じです。



