観光客はどこへ行くのか?
そして、そんな駅前に集った人たちの多くは、駅の南東側にある2本の商店街に向かってゆく。
線路に近い山側が平和通り名店街、それと並んで海側に仲見世通り商店街。ふたつの商店街の入口には小さな蒸気機関車があるのだが、それに目を留めるのはキッズくらいなものだ。
ほとんどの人は、家族や友人、恋人と落ち合えば、そそくさと商店街のどちらかに消えてゆく。
……といったところで、どちらの商店街もそれほど長くもない、小さなアーケードに過ぎない。なのに、いつになっても先に進めない。商店街の中には、駅前どころではないほどの人また人で溢れかえっているのだ。
あんバターに熱海プリン、あちこちに“行列のできる店”が並ぶ
よくよく見れば、商店街のところどころ……というかあちこちに行列のできる店があるようだ。あんバターにヨーグルト、有名らしい海鮮の店。商店街の脇の細い路地に入っても、どこに行っても行列だらけ。どこがどの店の列の最後尾なのか、よく皆さん分かりますねえ……。
ようやく行列の合間を縫って外に抜け出ても、今度は熱海プリンに大行列ができている。熱海駅前は、とにかく“行列のできる店”が集まっているようだ。
一介のおじさんとしては、熱海くんだりまで出かけてプリンもあんバターもなかろうに、と野暮なことを思ってしまう。それもわざわざ長蛇の列に並んでまで。
が、むしろそれはかえって逆で、わざわざ熱海に行って行列に並んでプリンを食べる。それくらいの余裕がある暮らしの方が、きっと日々は満たされているに違いない。
その証拠に、並んでいる人たちは誰一人としてイライラしていないし、楽しそうに笑っているではないか。しかめつらで行列をかわして先を急ごうとするほうが、自分で人生をつまらなくしているのかもしれない。
などと、どうでも良いことを考えながら熱海駅前の人混みを抜けてゆく。熱海にやってきている観光客の多くは、外国人ではなく日本人。それも、若いカップルや女性グループが目立つ印象だ。平日の真っ昼間だというのに、である。



