観光客が激減した「冬の時代」も…

 昭和の面影もまた、そのレトロさがかえって若い人を惹きつけるというから、完全に昭和を一掃しなかったことも、熱海にとってはプラスに働いたに違いない。

 

 昭和の歓楽街温泉だった熱海は、1990年代以降苦境に陥った。バブル崩壊後の長引く不況と旅行スタイルの変化による団体旅行の減少で、観光客数は右肩下がり。

 2000年代に入っても傾向は変わらず、2010年代前半には全盛期の半分以下の観光客数になっていた。

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かつての賑わいを取り戻した

 しかし、2010年代半ばにそれが反転する。海沿いの親水公園や駅ビル・ラスカのリニューアル、また大型リゾートホテルが現代人の趣向に合わせてリニューアルをしたことで、人気を取り戻したのだ。テレビなどの取材を積極的に受け入れたのも、功を奏したという。そういえば、毎日のように『ヒルナンデス!』に熱海が出ていたことがあったような気がします……。

 

 いずれにしても、古い魅力と新しい魅力が混然としていることが、熱海にとっての最大の魅力なのだろう。そしてもちろん、東京から40分という近さも大いに貢献していることは間違いない。熱海のビーチを眺めると、若者たちのグループが何組も楽しそうに遊んでいた。

 熱海の海から駅に戻るには、急な坂道や階段をいくつも登らねばならない。すぐそこまで山が迫り、それが海に落ちてゆく際に広がる小さな温泉地。熱海はどこを切り取っても坂道だらけだ。駅前からモノレールを建設しようという計画があったのも頷ける。

 急な坂道を登ってゆくと、キャリーケースを必死に引きずりながら歩く人の姿もちらほらと。この町には、キャリーケースはなかなかそぐわないようだ。夕方になると、駅から坂道を下ってくる人も増えてくる。

 

 早めにホテルにチェックインして、次の日までのんびりと過ごす。温泉に浸かり、その合間に町を散策し、行列のできる店で名物のスイーツの食べ歩きをしたり。それでいて、夕方に新幹線に乗れば、夜も遅くないうちに東京に戻ることができる。1泊2日の熱海旅行、きっと大いにリフレッシュできるに違いない。

 原稿を書くためではなく、本来あるべき形での熱海をいつか満喫したいものである。

撮影=鼠入昌史

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