3月、すかいらーくホールディングス(HD)が魚の炭火焼き定食を中心に手掛ける「しんぱち食堂」の運営会社・しんぱちを買収すると発表して話題を呼んだ。しんぱち食堂と言えば、都心部・狭小物件を中心に店舗を展開しており、夜にはちょい飲み・ひとり飲みでも人気が高い。

 いったいなぜ、このしんぱち食堂にすかいらーくHDは狙いを定めたのか?

すかいらーくHDが買収を発表した「しんぱち食堂」

ファミレスの王者「ガスト」が限界を迎えつつある

 すかいらーくHDのエースがガストであることは言うまでもないが、ガストに「これが看板メニューだ!」と言えるような専門性はない。かわりに「500円ランチ」などのリーズナブルさと、ドリンクバーやテーブル席などで「友だち同士で長居してもらう」空間にお金を落としてもらうスタイルを確立し、成長を続けてきた。

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 ランチの利益率が低くとも、外食の機会ごとに通ってもらえれば元は取れる。最初はドリンクバー利用だけの高校生集団でも、何時間も滞在してもらえればポテト・ピザ・パフェくらいは頼んでくれる。こうして広い層の支持を得ながら儲けを出してきたからこそ、ガストは全国に1200店以上も出店できたのだ。

すかいらーくHDの代名詞・ガスト(公式サイトより)

 ところが近年の物価高騰で格安メニューはことごとく値上がりし、もはや1000円以下で満足するのが難しくなってしまった。かつ、長時間利用が多すぎて回転率が落ち、店内はいっぱいでも売り上げは入ってこない苦しい戦いを強いられることに。

 ガストはまだ「ファミレスの王者」的なポジションをキープしているものの、安さでは「サイゼリヤ」に負けて国内店舗数も迫られつつある。「丸亀製麺」や「牛角」といったキラーメニューがある専門店と比較して選ばれる理由も少ない。そもそもファミレスという業態そのものが、曲がり角に来ているのだ。

 ガストから逃げそうな客層を「すかいらーく経済圏」にとどめるためには第2、第3のブランドが必要となる。だからといって、グループ内でもベテランのブランド「夢庵」(和食)、「グラッチェガーデンズ」(イタリアン)、「トマト&オニオン」(ハンバーグ)を今さら成長株として据えても、もはや新規の集客を期待できない。こうした背景から、しんぱち食堂に目を付けたのだろう。