ホルムズ海峡が事実上封鎖され、アメリカのガソリン価格は高騰。11月の中間選挙を控え、支持率を何より気にするトランプ大統領は焦りを隠せない。元イラン大使・齊藤貢氏は、トランプ大統領が「ポーカーのブラフ」で臨む中東情勢において、イランの「チェスの方が優勢だ」と分析する。(全2回の2回目/はじめから読む)
※この番組は3月19日に撮影されました。
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年3月21日配信)
トランプの「関心」は中東ではなく…
トランプ大統領はなぜイランに強硬姿勢を取り続けるのか。
この問いに対し、齊藤氏の答えは明快だった。
「トランプ大統領は実は中東の問題に関心がなく、自分の支持率だけを気にしていると思われます」
その鍵を握るのが、アメリカ人口の25%を占めるとされるキリスト教原理主義者(エヴァンジェリカル)の存在である。聖書の記述をすべて真実とする彼らは、トランプ大統領の強固な支持基盤となっている。
齊藤氏の計算によれば、エヴァンジェリカルの70%がトランプに投票しており、得票全体の17.5%に相当する。「17.5%だけでは当選しないが、この17.5%がなかったら当選できない」。この票田の存在が、対イラン強硬路線の背景にあるという。
イランがホルムズ海峡で行う“ローテク”攻撃
イランの石油戦略は、軍事力で優位に立つアメリカ・イスラエルと別の土俵で勝負する「非対称戦」の典型である。ホルムズ海峡を封鎖してペルシャ湾からの石油輸出を止め、国際原油価格を押し上げることで、11月の中間選挙を控えるトランプ大統領を追い込む。
齊藤氏は当初、アメリカのハイテク海軍にイランは太刀打ちできないと見ていたが、「読み違えた」と率直に認める。狭いホルムズ海峡では、沿岸からドローンやスピードボートを大量投入するローテクの飽和攻撃に対し、イージス艦でも対処しきれない。トランプ大統領が各国に護衛を要請したことについて、齊藤氏は「米海軍でできないことを、他の国の軍艦が来てできるわけがない」と一蹴した。
