一回りくらい若い子に「これでいいですか」と聞き倒して覚えた料理

笠原 正式に厨房に入るようになってどれくらいですか?

村田 10年弱です。

笠原 もう10年なんですか。「10年で一人前だ」って、僕らはよく言いますよ。

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村田 僕は30歳を過ぎて調理場に入ったので、自分より若いけれども部門の料理長をやっている子たちもいました。そういう子たちに聞き倒して。

笠原 僕の修業時代にもいたけど、年下の先輩というのがいっぱいできるでしょ?

 

村田 自分より一回りくらい若い子が作業をしている横で、一緒に同じことをやって、彼らの動きを見ながらやるんです。「これでいいですか」「合ってますか」って聞き倒して、うちの調理場はわりとフランクな感じなので、「オッケーです」「ばっちりです」みたいな感じで教えてくれて、「あ、これでいいんだ」って。それをさらに上の料理長クラスの人に「こんな感じなんですけど」って確認すると、「あー、大丈夫です、大丈夫です」みたいなやりとりの連続でしたね。

笠原 大将直々のマンツーマンレッスンとかは?

村田 それがね、ないんです。

笠原 ないんだ(笑)。

村田 厨房に入ったら、大将はなんにも教えてくれないんですよ。技術的なこととか、なんにも教えてくれなくて。まあ、僕も聞かないというのもあるんですけど、大将に(笑)。

笠原 見て覚えろ、みたいな?

村田 うーん、なんでしょうね。「あんまり言ってもしゃーないしな」みたいな気持ちもあったかもしれないですね。「これはこうやってこうやってこうやんねん」とか、「もうちょっと塩強め」とか、そういうことは大将はあまり言わないです。

大将には「古美術店に連れていってもらったり…」

笠原 どちらかというと同僚とか、先輩たちが、そのへんはやってくれたのか。ただ、料亭を継ぐっていうことは、料理以外の要素が大きいじゃないですか。それこそ掛け軸からうつわから、あらゆるしつらえを全部知っておかなきゃいけないじゃない。そういう授業的なものはないんですか?

村田 大将に関していえば、そちらのほうが比率としては多かったかもしれないです。新しく買った花器とか、軸とか、一番最初に家でばさばさっと開けて、「これええやろ」「これは誰々の作で、ここがええ」とかうれしそうに説明してくれるんです。たまに昼の営業が終わって夜の営業までの間に、古美術店に連れていってもらったりとか、そういうことはありましたね。

 

笠原 うらやましい。俺もそれ、ついていきたい。教わりたいです。

村田 本店の近所に、昔からお付き合いのある古美術店があるんです。いまは僕ではなく、孫を連れていっています。

笠原 お子さんは何歳?

村田 6歳です。小学1年生。

笠原 英才教育だね。