秘密入会ディナーは本当にあったのか
「まあまあ、落ち着けよ、ウォーカー。1つ変なことを訊こうと思うが、いいか?」
ダグラスが降参を示すように両手をあげた。
「そもそもその夜、秘密入会ディナーは本当にあったのか?」
「いや、なかったんだ。まずは“ボビーズ”に話を戻そう。クラブの主催者たちは全員町にいなかった。毎年恒例の視察旅行でハワイに行ってたんだ。言っておくが、これは大学の女ソロリティ学生クラブみたいな市民団体で、地元の病院に看護助手のお手伝いを派遣したりするような社交クラブ組織だ。限られた者しか入れない会員制なんだよ。そしてメンバーはおおむね金持ちばっかりだ。だから視察旅行でハワイになんか行き、町に残っているのは新入会員と非役員だけだった。会員もそう多くない。あまり大きな組織じゃないんだ。たぶん女の子が2、30人ってところで、そのうち半分ほどは何かしらの役員になっている。
だから事件が起きたとき、会員のほとんどは町にいなかった」
凶器のナイフと現場の血濡れの指紋は
「凶器についてもう少し知りたい」
レスラー(注:FBI行動科学課の特別捜査官)がまた会話に加わった。
「見つかったのか?」
「いや、見つかってない。せいぜいわかるのは、凶器は大型の片刃のナイフ、おそらく典型的なハンティングナイフだろうってことぐらいだ。だがこれも確認されているわけじゃない。目撃者はナイフを見てないからな。あるのは検死官の報告書だけだ。そこでは、刺創は片刃のかなり大型の刃物、すくなくとも刃幅1.5インチ(約4センチメートル)はあるナイフによるものとされている。警官が現場でバターナイフを発見したが、事件とは無関係だった」
「バターナイフのほかに何か回収されたものは?」
「たいしたものはなかった」
ウォーカーが言った。
「現場のポーチの手すりの1つに血濡れの指紋が残っていて、被害者のものではなかった。残念ながら部分的で、指紋鑑定するには不充分だった」
「被害者の話に戻ってもいいかな」
私が話題を変えた。
「事件が起きるまで、彼女の様子はどうだったの? 目撃者はどんなふうに話してる?」
「パニックになっている様子はなかった。アーノルドとその妻の話では、不安そうで、少し動揺しているように見えたらしい。その程度だ」
「被害者分析の見地からするとどう? 被害者プロファイルは?」
私は尋ねた。
「ちょっと待ってくれ」
ウォーカーがノートをめくっていく。