「駐車場で何かが起きて、まずい状況になった。喧嘩か何かしたんだろう。被害者はピントから降りて、『何よ、これ。私、帰る。あんた変だよ』とか何とか言った。そして、そこで何が起きたにしろ、ピントの運転手は悲しみ、不安になり、怒り、憤慨し、とうとう被害者を家まで追いかけて車を降りると、襲撃した」
「あまりにも無秩序で衝動的な行動だ」
ダグラスが言った。
「殺人が目的だったとは思えない」…犯人の動機は“恋愛感情”!?
「一連の行動は殺人のために計画されたものではなく、理由はわからないが、単純にこの少女といっしょにいたかったからじゃないか。おそらく恋愛感情から」
「じゃあ、高校生くらいの年齢の女性を想定してプロファイルを作るってことでいいかしら」
私は室内を眺めまわし、うなずく顔をいくつか見た。
「だとしたら、ハンティングナイフはプロファイルのどこに当てはまる? たまたまそこにあった凶器にすぎないとしたら、どうして女子高生が車にそんなものを?」
「まあ、運転手が車を所有していたのか、普段から友人か家族から借りているのか、そこはわからない」
ウォーカーが言った。
「もし後者なら、ナイフはアンサブとも彼女の目的とも無関係だった可能性が高い」
「被害者分析の観点から考えると、車の古さや状態も重要要素だと思う」
私は言った。
「これは経済力の欠如を示している。犯行がおこなわれた場所は一般に富裕層が住む地域で、大きな格差がある。車の状態からするとアンサブは低所得者層に所属すると考えられ、地域に溶けこめないことも不満に思ってたのかも」
殺人は計画的だったのか
「きわめて重要だと思うことを1つ挙げておきたい」
レスラーが口を挟んだ。
「車のことはしばらく脇に置こう。被害者の少女は周到な計画のもと、家から連れだされ、結局ナイフで殺害された。ナイフというのは普通、計画的な殺人で使われる凶器だ。しかも被害者とアンサブはかなりの時間2人きりで過ごしていたのにそのあいだは何も起きず、また、被害者の顔にはいっさい傷がなく、服が破れるなど争った形跡もない。
だが、君たちの中には、これは計画的な殺人ではないと主張する者もいて、そうなると凶器は選択されたものではなく、たまたまそこにあったものということになる。これだけ計画的にあれこれ仕組んでおきながら、いきなり被害者を刺殺するというのは、あまりにもギャップが大きい」
「われわれがまだ知らない何か別の事情があるのかもしれない」
ダグラスが話を広げる。
「駐車場で過ごしていた時間のことや衝動的な襲撃について説明してくれる何か」
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周到な計画と、衝動的すぎる凶行。プロファイラーたちが見出したその不可解な矛盾は、やがて思いもよらない「怪物の正体」をあぶり出していく。しかし、事件はまだ終わっていなかった――。