「だとすると、アンサブも“ボビーズ”の1人ってことだよな」
ヘイゼルウッド(注:FBIの管理官)が言った。
「そうでなきゃ、被害者が彼女の車に乗っていっしょにディナーに行ったりしないだろう。まして、駐車場で彼女としばらく過ごすなんて」
「もうプロファイリングが始まってるってことだな」
ウォーカーが言った。
「いいだろう。だが、犯人が“ボビーズ”の1人だと決めつけるには問題が1つある。最初の電話を受けたのは母親で、被害者自身ではなかった。これはわざとじゃないか、と僕は思うんだ。一種の偽装だと。同時に、誰にしろ電話をした人間は“ボビーズ〞の入会手続きについて細かいところまでよく知っているってことがわかる。だからそうだな、君の言うとおりかもしれない。運転手が会員だとわかっていなかったら、その車に被害者が乗るなんておかしい。“ボビーズ”が入会手続きに非会員を使うはずがないんだから」
「計画的」なのに「無秩序」な犯行
「プロファイラーとしての僕の考えはこうだ」
ダグラスが意見を述べはじめる。
「被害者と加害者は知り合いで、おそらくは、被害者の家族も友人も知らない何らかのつながりを持っていた。ここで起きたさまざまな出来事が示唆するのは、さっきウォーカーがじつに的確に指摘したように、加害者は“ボビーズ”の一員か、すくなくともその組織についてよく知っている、ということだ。
つまり女性に違いない。土地勘があることもまず間違いない。ピントの運転手は、地元のティーンエイジャーたちがよく行く場所に被害者を連れていっているからだ。状況から考えると、明らかに計画性がある。年端の行かない子供にはできないことだから、高校の上級生だろう。あるいは、卒業したてだがまだ地元を離れられず、そこに縛りつけられているのにどこにも所属できないことに、一種の怒りを感じているのか。
しかし矛盾しているのは、犯行の計画はとても秩序だっているのに、犯行の経緯にはまったく秩序がない。車に乗っている目撃者の目の前を走って被害者のところに行って刺し、しかも同じ目撃者の横を二度も通っている。一度は被害者のところに行くとき、二度目はそこから戻ってくるとき。あまりにも軽率だ」
「計画性がありながら無秩序だという点は重要だな」
ヘイゼルウッドはダグラスの考えを引き継いで同意した。
「だが、アンサブの計画が本当はなんだったのか考える必要がある。殺人が目的だったとは思えない。というのも、チャンスならその前にいくらでもあったからだ。すくなくとも、駐車場に車を停めていた35分間がそうだし、その前だって2人でずっと同じ車に乗っていた」
「そのとおり」
ウォーカーもうなずく。
