ジェットコースターのような前作との“違い”
『1』は、大学を卒業したばかりのアンディがジャーナリストを目指しながらも成り行きで未知のファッション界に飛び込み、悪戦苦闘する姿を描いていた。当初はファッションを小馬鹿にしていたアンディだが、やがてその奥の深さ、現場の人々の情熱と努力を知り、自らもその世界にはまっていく。
優秀さと粘り強さゆえに頭角を現したアンディだが、いつしか業界のトクシックさに足を取られて自分を見失ってしまう。かつ華やかさの裏に巨額ビジネスを賭けた熾烈な駆け引きが存在することも知り、アンディはファッション界を去る決意をしたのだった。
つまり『1』は若いアンディのジェットコースターのような1年間を描いていた。観客もアンディと一緒に猛スピードかつ急激なアップ&ダウンを仮想体験した。そしてアンディの人間的な成長の目撃者となり、そこに自分を重ね合わせた。とは言ってもアンディは常に明るく、会話はコミカル、画面は一流のモード・ファッションで彩られており、観客にとって目も耳も心も楽しい映画なのだった。
コンプライアンスと「ボディ・ポジティブ」
『2』ではアンディは20年のキャリアを積んだ優秀なジャーナリストとなっているが、今回もまた思わぬ出来事によってランウェイの編集室に戻ることとなる。
ランウェイの重鎮であるミランダとナイジェルは健在だったが、ファッション雑誌をめぐる様相はすっかり変わっていた。紙媒体で深く掘り下げるよりもオンラインで簡単にクリックされる内容を求められ、ファッション界の女王ミランダでさえSNSのミームとされていた。アンディの使命は本格的な記事の執筆によってランウェイを救うことだった。
また、『1』ではアンディと共にミランダのアシスタントだったエミリーは、今やディオールの上級職となっている。つまり『1』でファッション界の絶対君主であるミランダに仕えていたアンディとエミリーは今やミランダに近いポジションまで階段を上っており、したがって『1』に比べると『2』は、ファッション・ビジネスの存亡をかけたハラハラドキドキの中にも、ある種の安定感が漂っている。
とはいえ二作を見比べると、20年の時代の変化を告げる描写が多々あり、そこも『2』の見どころとなっている。

