対してアンディのアシスタント、アジア系のジン・チャオ(ヘレン・J・シェン)は、長身のアンディと立ち並ぶことで低身長が強調されている。服のセンスも一流ファッション雑誌で働く者とは思えないコーディネートだ。ボサボサの髪に10本以上の“パッチン留め”を着け、大きなメガネをかけている。よく見ると、メガネはツルが曲がった独特のデザイン。1970~80年代に流行ったもので、今では「昔のオバさん」を思わせるもの。スタイリストはジンのファッションを意図的に「ダサく」作り込んだと思われる。

アジア系キャラクターのジン・チャオ(ヘレン・J・シェンが演じ)が登場する公式映像が公開されると、コメント欄には「アジア人が『オタクっぽい』か『場違い』だという、時代遅れのステレオタイプを示している」などと批判的な意見が並んだ(20th Century Studios-YouTubeより)

 ジンへの批判はファッションだけではなかった。上司となるアンディとスムーズに会話しようと無理に発したセリフがぎこちなく、非礼でもあった。アンディが言葉に詰まると自分は望まれていないのだと焦り、自分がどれほど高学歴、高成績かを速射砲のように話し出す。

「背が低い」「ファッションがダサい」

 つまり米国アジア系の古いステレオタイプ「背が低い」「ファッションがダサい」「コミュニケーション力に欠ける」「自己肯定感が低い」「ガリ勉・高学歴」を全て盛り込んでいる。さらにジン・チャオという名前が、アジア系をからかう際に発せられる中国語の音マネ「チン・チョン!」を思わせる。

ADVERTISEMENT

 また、ジンの徹底的なステレオタイプ描写に、予告編を見た多くの人が『1』でのアンディのように「きっと映画の途中で大化けしてファッショナブルになる」と予測した。ところがジンの出演場面は少なく、しかも「大化け」は起こらなかった。

ジンを演じたヘレン・J・シェンはアメリカ・ニュージャージー州出身で、中国から移住してきた両親を持つ(インスタグラム@helenjshenより)

 それでも『2』は時代に沿った多様化を目指したと思われ、中国系アメリカ人のベテラン女優、ルーシー・リュウがストーリー展開に大きく関わる大富豪の役で出演している。

 また、ランウェイの編集会議のシーンは『1』の同じシーンに比べて黒人とアジア系の編集員が増えている。若いアジア系男性の編集員はセリフもあった。

 パーティ・シーンには大勢のセレブがカメオ出演しており、レディ・ガガ、ファッション・デザイナーのドナテラ・ヴェルサーチなどと共に、各界の黒人セレブが何人もいた。スーパーモデルのアノック・ヤイやナオミ・キャンベルなど、その数は10名以上。ただしカメオのほとんどはセリフはなく、あってもストーリーに関与しない一言か二言のみ。

 しかもアジア系のカメオ出演者はコメディアン/トーク番組ホストとして人気があり、映画『クレイジー・リッチ!』(2018年)などで俳優としても活動するロニー・チェンを含む2人のみだった。

 そうした中、『2』の人種マイノリティの中で大きな役だったのは、やはりミランダのアシスタントのアマリと、アンディのアシスタントのジンだと言える。だが、アマリは上司からの指令を全てそつなくこなし、ジンは出番が少なく、どちらも『1』でのアンディとエミリーのように強い個性を発揮し、かつ上司や仕事との葛藤を見せることはなかった。

次の記事に続く 「日本人=一重まぶたで出っ歯」から変わったことは…『プラダを着た悪魔2』炎上から考える、アジア系描写の“複雑なリアル”