ガマ内部の環境は外気からの影響を受けにくく、内部はひんやりとした冷たさを感じる場所もあれば、湿気を含みむわっとする場所もある。ガマに入る者は、まずその温度と湿度の急激な変化を身体で感じることになる。それは心の有り様にも変化を及ぼし、異空間に足を踏み入れている、ということを意識下で感知する。人によっては「この先に進むことはできない」「気分が悪くなってきた」「早くここから早く出たい」という気持ちになるようだ。さらに鋭敏な人は「何か感じる」「背中がずーんと重たい」など、霊的なものとして受け取ることもある。

洞窟内に入ることへの恐怖

 外気とは異なる温度や湿度、暗くて視覚が限定されていること、そして何より沖縄戦の際にここで大勢の人たちが命を落とした場所だという事実。それらの要素が絡み合ってガマに入る者の心身に作用する。

 ガマの内部が静かであることも心身の変化に大きく影響しているように思う。静かなガマでは、自分が動く音がとても目立つ。反対にじっと動かずにいると静寂が際限なく続く。音が吸音されやすい場所もあり、そこで会話すると、自分の声が消えていくようで奇妙な心持ちになる。眼前の闇の先にブラックホールのようなものがあって、そこに声が吸い取られていくような感覚だ。

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 一方で、周囲の岩によって音が反響するような場所もある。内部に小川のように水が流れているガマもあって、そこでは常に水が流れる音が反響し合っている。ずっと聞いていると、ところどころで水の音とは別の音が聞こえるときがある。人の話し声のようにも聴こえるその音はおそらく幻聴のようなもので、反響し合った音でそう聞こえているのか、あるいはずっと同じ音を聞きすぎているせいなのか、わからない。これも先に挙げたように、様々な要因が絡み合った結果、私の体内で生成された感覚からくるものなのかもしれない。

 そのせいか、一人で、あるいは具志堅さんと二人だけでガマにいると、確かに少しだけ怖くなる瞬間があった。暗さや静けさからくる精神的な変化は、身体的な恐怖を想像することを助長した。

 例えば、ガマの中にいるときに地震が来たら岩盤崩落の可能性は一気に上がるだろうし、窪んだ岩場から落下して歩けなくなるような怪我でもすれば、どんなに声を上げても助けに来る人はいない。携帯電話の電波が届かない場所も多いので致命的なケースにもなりかねない。そのようなネガティブな想像が頭をよぎってしまうと、暗さと静けさも相まって恐怖に飲み込まれそうになる。そんな時はできるだけ体を動かし、目の前の作業に集中することで恐怖を払拭した。