ガマの中で作業することに恐れはないのか、具志堅さんに聞いてみたことがある。

「ガマの中とか、まあ、最初のうちは怖いと思うときもあったけど、続けていくうちに大丈夫になったのかね。危ないと思ったらどこもかしこも危ないから。慣れはあるとは思うけどさ」

 一人でガマに入る場合や身の危険を感じる場所に立ち入るときは、入り口付近にカバンや持ち物の一部を置いて万が一の目印にしておくのだそうだ。あらかじめ予防線を張ることで心理的な負担を減らしているのかもしれない。こうも言っていた。

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「もし自分に霊感があったとしたら、遺骨収集をこんなに長く続けることはできなかったはずよ。呼ばれすぎて(笑)。自分はさ、それについては鈍感で良かったと思っているよ」 

「怖いという感覚を忘れなければ殺し合いをする戦場に行くことなんてできないはず」

 しかし、あるときにはこれらとは相反するようなことも言っていた。

「怖いという感覚を持つことは大事なことですよ。その感覚は忘れないほうがいい」

 それは沖縄で教員をしている方が具志堅さんにある質問をした際のことだった。「最近の子供たちは暗闇を極端に恐れているからか、ガマに入ることさえできない子供が多くなっている。これをどう考えれば良いか」。それを受けて先のように返答した後、具志堅さんは言葉を続けた。

「怖いという感覚を極限まで抑え込んで戦うのが兵隊であって、そういう人たちが戦場に駆り出されて殺し合いをする。怖いという感覚を忘れなければ殺し合いをする戦場に行くことなんてできないはず。だからそういう子にはそのことを伝えるのもいいのかもしれません。ガマが怖いと思って中まで入ることができなかった。その体験をしっかりと残すことでも学びになると思います」

写真はイメージ ©KUMI/イメージマート

 ガマが普段の生活空間と異なる雰囲気を醸し出していることは間違いないだろう。その暗さや狭さ、温度や湿度が明らかに異なる空間に対して子供たちが恐怖心を抱くのも無理もないように思える。さらにほとんどの場合、子供たちはガマを訪問する前に沖縄戦の際にガマで何が起きたのかということについて事前学習を行なっている。それはガマを訪れる際に持っておくべき必須の知識だ。その知識はガマを訪れる人の想像力を刺激し、目の前の風景を一変させる可能性を秘めている。想像力豊かで繊細な子供の中に、目の前のガマの暗さと雰囲気に圧倒されて、事前に学んだ戦時中の熾烈な状況を喚起しすぎる者がいても不思議ではない。

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