ジョブズが探させた「モチ屋」の正体

 大島さんの予想に反し、ジョブズが探していた店は「おはぎの丹波屋」だった。大阪、京都、兵庫で和菓子チェーン店を展開している。

ジョブズが大好きだった「おはぎの丹波屋」(著者撮影)

 店に行ったジョブズは、10個の大福が入ったプラスチックケースを手に、ニコニコしながら戻ってくると、車内で1つパクついた。そして、おいしそうに、あっという間に5つを平らげた。すし岩でカマトロを6貫続けて食べたときと、とてもよく似ている。

大福をパクパクと平らげたという(著者撮影)

 あと5つ残っていたので、大島さんが「1つぐらいは勧められるかな」と期待して「残ったのはどうするの?」と聞くと、ジョブズは「部屋に持ち帰って、僕がみんな食べる」と答えた。

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正真正銘のまんじゅう好きだった

 ジョブズが好きだったのが大福のあんこなのか、餅っぽい感触だったのかはわからない。

 大島さんが笑って話す。

「ジョブズさんは店が大福を準備していたのを見たんでしょうね。本当はその場で食べたかったんでしょう。でも、ジョギングの格好でお金を持っていなかったんでしょう」

ジョブズが好んだ京都・上七軒の古い街並み

 大島さんは、京都にはいろいろな和菓子があることを見てもらおうと思って、老舗の店にも連れて行ったが、ジョブズはまったくパクついてこなかった。店から出てくるなり、「ここはいや。モチ屋へ行け」と。

 ジョブズはその後も京都を訪れたときには、「おはぎの丹波屋」の大福を食べた。

 アメリカですし職人としてジョブズと20年余り付き合った佐久間俊雄(さくまとしお)さんの話をまとめた『ジョブズの料理人』にも、2007年以降の話として、ジョブズのまんじゅう好きが出ている。そこには、ジョブズが東京・赤坂の和菓子店「⻘野(あおの)」のまんじゅうをいたく気に入り、佐久間さんに「板前を修業に出したらいい」と提案したり、晩年に体調が悪いときには、妹をまんじゅうを受け取るためだけに佐久間さんの店に行かせたりしたことが記されている。

 ジョブズは正真正銘のまんじゅう好きだった。(つづく)

次の記事に続く 「きょう、ジョーブツというアメリカ人がきたよ」スティーブ・ジョブズを“印刷会社の人”だと思っていた男が、10年の交流を続けられたワケ

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