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「病気なのはあんたのほうでしょ」
「私は病気なんかじゃありません! どういう根拠でそんなこと言うんですか」
「今は信じられないかもしれませんが、あなたが霊を感じるのは病気のせいかもしれません」
私が努めて冷静に伝えると、
「病気なのはあんたのほうでしょ。私は病気じゃない。私が除霊しないと世の中の人が困るんです!」。
統合失調症の患者で厄介なのは“病識の欠如”だ。自分が病気でおかしくなっているという自覚がない。「病気だから入院が必要」と伝える医師に、「病気じゃないから入院しない」と患者が反論する押し問答は統合失調症の診察では定番だ。
治療をしないと「自分は病気である」という自覚は生まれない。ただ、この場では何を言っても逆効果なので、精神保健福祉法という法律を使って強制的な入院を行なう。
「西田さんは入院を拒否されていますのでお母さんの同意による強制的な入院となります」
「はあ? 強制? ふざけないで。病気じゃないのに入院なんて監禁でしょ。犯罪で訴えますよ」
「訴えますよ」もこの病気の鉄板フレーズだ。もちろん患者の人権は厳正に保護されているため、入院対応へ不服申し立てがある場合は、然るべき機関に患者自身で退院請求をすることができる。ただ、幻覚・妄想状態で緊急入院した事案で患者本人の希望が通ることはまずない。