右翼団体・日本皇民党による「ほめ殺し」作戦に音を上げ、総裁選辞退まで口にし始めた竹下登。見かねた政界のドン・金丸信は、東京佐川急便の渡辺広康社長を高級レストランに呼び出し、「竹下政権樹立に力を貸してくれ」と泣きついた。そして、彼らはある暴力団会長を頼る……。
ゴシップのモミ消しからゴルフ場開発まで、バブル期に蠢いた“経済マフィア”たちの黒い交際を、大下英治氏による『昭和・平成 経済事件秘録 誰も書けなかった「経済マフィア」たちの正体 』(清談社Publico)より抜粋、紹介する。
◆◆◆
解決に動いた東京佐川急便渡辺社長と超大物
皇民党の「ほめ殺し」作戦に困り果てた竹下は、総裁レースを棄権するとまでいい出した。
金丸が、腰を上げた。
「わしに心あたりがあるから、まかせろ。ほかの人間を、ウロウロさせるな」
金丸は、1987年9月末日、赤坂にある日商岩井ビル19階の金丸の行きつけの高級レストラン「クレール・ド・赤坂」で、東京佐川急便の渡辺広康社長に相談を持ちかけた。
「竹下を総裁にするように、工作している。中曽根総理からの後継者指名はまちがいないと思うが、困ったことがある。右翼の日本皇民党が騒いでいる。このままでは中曽根さんの後継者指名が、竹下にならないかもしれない。なんとかならないかね。竹下政権樹立に、力を貸してくれ」
渡辺は、しばし思案にふけった。組んでいた手をほどくと、ぽつりともらした。
「毒を制するには、毒をもってするのがいちばんいいと思う。石井会長に、正式に頼んでみますか」
渡辺は、稲川会会長の石井隆匡の名前を出した。
さすがの金丸も、一瞬ひるんだ。稲川会会長という大物に正式に頼めば、あとあとどうなるかと考えこんだ。
しばらくためらっていたが、意を決したように頼んだ。
「よろしく、頼みます。石井会長にお骨折り願いたい。あなたからも、お願いしてもらえないか。あんただけが、頼りだ」
