私が思い出したのは岡村靖幸だ。とくに90年前後、身体、本能、神経……圧倒的なフィジカルから、リズム、ハーモニー、メロディ、そしてダンスを噴出させていた姿。

ピアノに両手を叩き付ける藤井風の向こう側に、あの頃の岡村靖幸を、私は確かめた。そして、少しばかり様子がおかしいところもそっくり。

AIにとっての「最後の敵」

何かというとAIの話、取り立てて詳しくないくせに恐怖ばかり語るのは、年かさの悪い癖だと思いつつ。これからの音楽シーンのことを考えると、やはり「AI恐怖論」を持ち出さざるを得ない。

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ただ詳しくないくせに、何となく確信できるのは、AIにとっての最後の敵、つまりボスキャラは人間のフィジカルだということ。

ということは、日本の音楽シーンにおいて、AIにとっての最後の敵は藤井風のライブということになる。

21年9月4日に開催された「Fujii Kaze "Free" Live 2021 at NISSAN stadium」。コロナ禍ということもあり、無観客のだだっ広い日産スタジアムから生配信されたライブ。

芝生の上にグランドピアノがぽつんと1つ。そして圧倒的なフィジカルを駆使して、何かが噴き出る、噴き上がるように弾くわ弾くわ、歌うわ歌うわ。

舞台が舞台だけに、サッカーでいえば日本代表になれるほどの身体能力。

そして、今となってはこう思う。あのライブは、未来永劫AIによって乗っ取られない最後の聖域、サンクチュアリだったのではないかと。

「ロックってダサい」を覆したアーティスト

「あぁロックだ」「ひっさびさのとびっきりのロックだ」――。

コロナ禍の静けさの中、Vaundyという奇妙な名前の若者の音楽を爆音で聴きながら、そう感じたことを憶えている。

自分の生きてきた記憶と感覚でいえば、80年代までは「ロック」という言葉が、若者音楽文化のど真ん中にあった。しかし、90年代以降「ロック」がワンオブゼムに成り下がった気がする。