紙の権利証なら精密な偽造品が作れるし、所有権移転の登記手続きに必要な本人確認書類となる免許証、保険証も偽造可能だ。

 事件当時、保険証と一体化したマイナンバーカードはまだ存在しなかったので、偽造された保険証が本人確認書類となった。また、パスポートにも住所が記載されていたため、それも偽造され悪用された(2020年2月以降発行分は住所記載なし)。

 登記手続きには印鑑登録証明書が必須だが、これさえ当時はパスポートや保険証があれば勝手に改印できてしまった。勝手に改印してしまえば、用途は「詐欺」でも、実質「本物」の印鑑登録証というカードと、それによって印鑑登録証明書も発行できてしまう。

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 不動産取引では仮登記(将来の権利変動の予約のようなもの)と本登記(予約からの正式な登記)の2段階があり、「仮登記の際は土地の権利証の添付が不要」というポイントも狙われた。

 本登記の際には権利証の原本などの提出が必要だが、本人による事前通知制度や公証役場により本人確認などの書類の提出を行ったり、司法書士などの代理人による本人確認情報の作成などにより提出をせずに申請が通る。

積水ハウスはなぜ騙された

 積水詐欺事件においては地面師グループによる「原本を提出できない複雑な事情」の理屈と、弁護士作成の本人確認情報により受付が進められたことも、巨額の詐取金が犯行グループの手に渡った理由のひとつである。

 積水詐欺事件では17年4月に、地面師グループの用意した偽の地主が株式会社IKUTA HOLDINGS(後に株式会社IKUTAに変更)を仲介して積水ハウスと売買契約を結び、手付金の支払いと仮登記がなされた。