3人の「主犯格」
「“役者”になれそうなおばさんが見つかったから、会いに行って写真を撮り、名前を書いた紙を持ってきてほしい」――
カトウが東京・町田に呼び出され、ある人物からそう指示を受けたのは、16年12月のことだった。この夜が、不動産ブローカーをしていたカトウが積水詐欺事件に関わる最初のきっかけとなった。指示をした人物からは「これは内田マイクたちがやってる物件だ」「役者がいないから、こっちで用意することになった」とも告げられた。
海喜館の土地をめぐる地面師の計画が具体的に動き出したのは、この直前のことだとされる。その流れを追っていく前に、まずは事件の「主犯格」として逮捕・起訴され、有罪判決が下った3人について簡単に説明しておく。
・内田マイク(逮捕当時65歳、懲役12年)
海喜館の土地に最初にツバをつけたのが、地面師として警視庁捜査2課(詐欺や汚職など知能犯罪担当)からマークされていた内田だった。
「マイクさんは最初、海喜館の土地を地上げしようと動いていたものの、地主になかなか会えずにいました。そこで偽造の権利証を作るなど、詐欺計画に傾いたと聞いています」(カトウ)
内田は地面師として様々な事件のウラで暗躍していた「常習犯」だった。マイクは本名である。
内田や高橋などの偽名で1990年代から不動産ブローカーとして活動しながら、地面師詐欺にも関与していた。積水詐欺事件前にも別件で受刑歴があり、15年11月には杉並区内の駐車場オーナーになりすまして土地を売却し、億単位の金を詐取した事件で逮捕されている。実刑判決が下っていたが、被害者へ賠償したことで減刑され保釈されていた。