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「バイク乗る前に吸って、事故ったやつもいる」
私は意外に思った。薬物に囲まれた環境にいる少年なら、もっと軽く考えているのかと思っていたからだ。
「ヤバいって、どういうふうに」
「1回ハマったら、なかなかやめられんみたいです。うちの周りでも、完全にジャンキーみたいになってるやついますよ。バイク乗る前に吸って、事故ったやつもいるし」
少年は怖がっているというより、少し呆れているように見えた。
今の少年たちは、薬物を知らないわけではない。むしろ、私たちの世代よりもずっと多くの情報を持っている。大麻、MDMA、危険ドラッグ。聞き慣れない名前も、彼らの間では驚くほど自然に会話に出てくる。
私は、少し説教じみたことを言ってしまった。
「薬物って悪いことだよね。やめたほうがいいんじゃない」
少年は、こちらが予想していたよりも落ち着いた口調で答えた。
「これは薬物にならないと思いますよ。だって合法じゃないですか。ネットとかでよく見るんですけど、大麻って体に良いって聞きましたよ。それに大麻が合法の国もたくさんあるんですよ」
私は言葉に詰まった。
もちろん、その理屈がおかしいことはわかっている。合法の国があるから安全だという話ではないし、体に良いという言い方もあまりに乱暴である。未成年が手を出していい理由にはならない。
しかし、少年は本気でそう言っているように見えた。悪いことをしているという自覚が薄いのである。