「長生きしなきゃいけない」と思わなくなった理由
――一馬くんの看取りを経験して「死生観」が変わったそうですが、どう変わったのでしょうか。
佑太 「長生きしなきゃいけない」って思わなくなったことです。もし仮に、娘たちが病気になったら、きっと「一馬と同じようにできる限りの薬を試したい」と思うでしょう。でも、自分が病気になったら、そうは思わないんです。長生きすることより、どう生きるかという「質」を高めないといけないなと思うようになりました。
人生って、あっという間に終わる。それなら、めちゃめちゃ冒険しまくろうと思っています。
麻純 だから夫は、思いついたらすぐ行動するんです(笑)。
亡くなった後も、一馬くんは家族の中心にいる
佑太 僕は「挑戦」をキーワードに生きています。一馬が「ワクワクすること、大好きなことをした方がいい」って教えてくれたから。死ぬまでに、一馬に会いに行くまでに、どれだけのことをやりきるか、だと思うんです。
その冒険のひとつとして、去年11月にはスカイランタンを空に放つグリーフケアのイベントを開催して、1300人も集まってくれました。笑って死ねるように、挑戦を積み重ねたいです。
麻純 私は一馬が亡くなって、「これ以上人生でつらいことはない」と思うほど、どん底を味わいました。負の感情もたくさん経験しましたが、私たち夫婦の絆は深まりました。息子の闘病を二人で経験して、今は活動も一緒にしているからより深くなっている気がする。
佑太 夫婦だけでなく家族の絆も深まったね。家族と一緒に過ごすことは当たり前じゃないって気づかされたし、亡くなった後も、一馬は家族の中心にいるんです。
麻純 夜、家族で寝る時、優里南と次女の絃羽(いとは)が「真ん中は、一馬がいるね」って言うんです。
佑太 絃羽は一馬に直接会ってはいないけど、写真や動画がたくさん残っているから、認識してるんでしょうね。一馬と優里南の誕生日の時、椅子に座ったら、絃羽から「そこは一馬の席!」って言われました。
――家族全員の心の中に、一馬くんがいる。
麻純 一馬がいなかったら、今のこの生活はない。きっと、のうのうと生きていたと思う。一馬のおかげで、「これが、自分の人生を生きているってことなんだ」って思えるんですよね。私たちの活動や一馬のことを知ってくれた人の人生に、何かスイッチを押すようなきっかけになっている。それが純粋に嬉しいです。
撮影=石川啓次/文藝春秋
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