番組では、ジャニーからの行為を「マッサージしてもらったレベルの、ほんの少しの延長」と話していたが、実際にはジャニーの性器を握らされるなど、明らかに被害といえる行為だった。だが、平本の口調はあっけらかんとしていて、「オレは被害と思ってないから」と言う。そして、「取材には、俺もかなり協力したんですよ」と元ジュニアを紹介したことなど、BBCのコーディネーターの役割を果たしたことを強調する。当時の私は、平本のこういう“プロっぽさ”が被害者としての深刻性を薄めてしまうのだと不満に感じていた。彼がこんな態度を取る理由が、家族に対して自分の被害の詳しい内容を打ち明けられていなかったため、と知るのはだいぶ後になってのことだ。

 実はハヤシについても、平本がBBCに紹介したと聞き、私も紹介を頼んだ。平本はLINEでハヤシと私を繋げてくれるという。

 だが、ハヤシの取材はスムーズには進まなかった。

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〈BBCの反響が凄く、ネットを見ていると怖くなってくるので、もう少し様子みてもいいですか。申し訳ありません〉

 取材依頼のメッセージを送ると、こんな返事が返ってきた。番組の中でハッキリと被害に遭ったと話しているのはハヤシだけだった。インパクトが強い彼に、注目が集まるのはたしかに自然なことだった。

 じりじりと返事を待つこと2日。週刊誌のスケジュールでは長い時間だ。彼から電話があり、なんとか取材を受けてくれることになった。その日は記事の締切日のため私は取材に行けず、遠藤がハヤシに会いに行き、その場から電話で取材内容を伝えてくれ、ギリギリで彼の証言も盛り込むことができた。ジャニーの自宅マンションに行った際、夕食にカレーが出たこと、近藤真彦が使っていた部屋で眠ったことなど、証言にはディテールがあった。

 だが、BBCに登場した3人だけでは十分に取材したとは言えない。私たちは並行して、取材に答えたことのない元ジュニアを探していた。

 その後、33週に及んだキャンペーン報道の核は、被害を受けた元ジュニアたちの証言を載せることだった。彼ら一人ひとりの声を集める。被害者の声が積み重なったとき、それぞれの証言の説得力は、相互補完で強みを増すだろう。

 しかし、証言者集めは想像以上の苦戦を強いられることになる。《続く》

 この続きでは、元ジュニアの被害証言を集める取材の裏側のほか、事務所スタッフの関与やSMILE-UP.東山社長誕生の前に開かれたジュリーと大物タレントたちの食事会などについても取り上げている。「週刊文春 電子版」では連載第1回以降の回もあわせて読むことができる。

(文中敬称略)

(たかはしだいすけ/1978年、岩手県生まれ。早稲田大学卒。2025年まで週刊文春の特派記者として芸能を中心に取材し、フリーに。16年、ベッキーと川谷絵音の不倫報道で「第23回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」大賞を、23年、ジャニー喜多川氏によるジャニーズJr.への性加害報道で「第3回調査報道大賞」大賞を受賞した。)

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