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リストラされた会社を訴訟した妻
あるべき母親という存在がなかった上に、父親からも腫れ物扱いされていたようなのだ。朋美の妄想性障害は、この生い立ちが下敷きだったことを、康祐の話は表している。
交際当初は目立った兆候は見られなかった。
しかし、それも長くは続かなかった。例のワキガ事件と時を同じくして、朋美がおかしな行動をするようになった。
「何がきっかけかはわかりません。朋美が別人になった。そんな印象でした」
髪を突然、金髪にしたり、ヤンキー車として知られる日産のスポーツカー『180SX(ワンエイティ・エスエックス)』を乗り回した。ありもしない浮気で癇癪を起こす。事務職に就いていた仕事先でトラブルを起こしリストラにもあった。
リストラされたとき朋美は、すごい剣幕で会社に乗り込んだ。不当解雇を訴え、果ては和解金を勝ち取った。妄想性障害の症状として、自分に非がないと思い込んでいることが敵対的行動につながり、訴訟などに出ることがあるという。朋美の行動はそれを描きだしていた。
ついに朋美は仕事すらしなくなった。
「自分が守ってあげるしかない」――康祐は自分に言い聞かせた。そして結婚を決めた。家事はままならず、康祐は仕事をしながら身の回りの世話をする毎日だった。