「まさか本当にやるとは……」
当時を振り返り、康祐が朋美への思いを語る。
――新聞記事と義理の父への電話で元妻が美咲さんを殺したことがわかり、どう思いましたか?
「当初は、実際に娘の遺体を見るまでは信じたくない、ひょっとしたら間違いかもしれない、という。でも、現実なんだよな、っていう思いで頭の中がぐちゃぐちゃでした。で、少し冷静になって思ったのは、とうとうやってしまったんだな、ということでした」
――こういう結果になることを思っていたんですか?
「最悪の結末、それが頭の隅にあったんですよ」
――なぜですか?
「朋美が危険人物だからです。だからこそ親権は自分が取らなきゃいけないと思ってたんですけど」
――そこまで危険人物だと思ってたのですか?
「危険人物は言い過ぎかな。要は、子どもを育てられないことがわかっていたので」
――いつか子育てを放棄してどこかに捨てちゃうんじゃないか、ぐらいなことは思っていた。
「思っていました。それが殺しに繋がってもおかしくない、と思っていました。でも、まさか本当にやるとは……」
その日の午後、義理の父から美咲さんの居場所を聞いていた康祐は警察署の霊安室にいた。司法解剖は済んだ後で、布団から首と顔だけを出し、頭は包帯でぐるぐる巻きの美咲さんが横になっていた。顔は赤紫色で、口を大きく開けていた。
康祐は、美咲さんが「『助けて!』と叫んでいるように見えました」と語った。
この状況と事件とを重ねれば、そんな声を無視して朋美は美咲さんの首を、まずは息がしなくなるまで両手で締め続けた。そして冷たくなった美咲さんをタオルケットで包み、背中に一枚のオラクルカードを置いた。そのうえ自らの体をナイフで突き刺し自殺を図った。
康祐が美咲さんの遺体を霊安室で見たこのとき、朋美は意識不明の重体だった。だがしばらくすると、一命を取り留めたことがわかった。康祐はこのとき抱いた憎しみをためらいもせず口にする。