娘の誕生を機に極道を辞め、入れ墨や指がないことを隠して必死に真面目な勤め人として生きてきた佐藤智明氏。愛する娘の「パパはどうして小指がないの?」という問いに「ワニさんに食べられた」と切ない嘘で答えながらも、幸せな温かい日常を築いていた。

 しかし、その小さな平穏は長くは続かなかった――。自らの会社を立ち上げ「一国一城の主」となった男を襲ったバブル崩壊の荒波。そして、借金返済と家族のために彼が下した「哀しい決断」とは? 新刊『先生は、元極道』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目)

写真はイメージ ©getty

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一国一城の主に

 塗装工場では約2年働きました。

 辞めたのは、周りの社員に小指がないことがバレ始めたからです。作業中は軍手をはめるのですが、手を握ると小指の部分だけ軍手の指が立ってしまうので、隠し通すことができませんでした。

 入れ墨があるため更衣室で着替えられず、また義理の母がその優しさからシンナーを扱う塗装工場は身体に良くないから辞めたほうがいいと言ってくれたこともあり、入れ墨や指のないことなども気にしないで働ける現場仕事に転職することにしました。