2/8ページ目
この記事を1ページ目から読む
彼女がわっと泣き出した日
何度かお泊まり会をするうちに、ある夜、房枝さんが過去についての打ち明け話をしてくれました。それはなかなか衝撃的な内容で、正直驚きましたが、「過去を乗り越えて、今の幸せを掴んだ房枝さんは、本当にすごいと思う」と伝えると、房枝さんはわっと泣き出しました。そんな房枝さんの姿に、私ももらい泣きしてしまいました。
「アキちゃん、聞いてくれてありがとう。心が楽になったわ」
涙を拭いながらそう言う房枝さんに、私は、大人になってからでも心からの友達ってできるものなんだな、と感動しました。
「うちのカフェで、あなたのパンを出してみたら?」
そのころ夫は、勤めているベーカリーで、自分が思うような仕事ができないことに悩んでいました。県内に5店舗ほどあるチェーン店だったので、メニューは本部が決めて、雇われ店長である夫はマニュアル通りのパン作りに専念しなければなりません。
スーパーに入っている店舗だったため、主力はクリームパンやあんぱん、焼きそばパンなどスタンダードなメニューでした。社長が訪れるたび、「こんなパンはどうか」と提案をするのですが、なかなか取り合ってもらえないとぼやいていました。
「国産小麦にこだわってシンプルなパンを作りたい」と自宅で天然酵母を育て、休みの日でも生地を作っていましたが、転職する勇気もなく、宙ぶらりんな気持ちをもてあましているようでした。そんな気持ちをふと、飲み会の席で夫が漏らしたとき、房枝さんが言いました。
「じゃあ、うちのカフェで、週に1回、あなたの作りたいパンを出してみたら?」